JR西日本381系「くろしお」仕様車 | 車内観察日記

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鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。


近畿圏で和歌山県といえば手ごろな観光地というイメージが強く、白浜や勝浦などは観光資源を多数有する地域として知られています。そんな紀伊半島南部と関西地区を結ぶのが特急「くろしお」です。


そんな「くろしお」で使用されてきたのが、元祖振り子電車381系です。1976年より40年に渡って紀伊半島を走り続けてきました。


全編成がこのJR西日本更新色くろしおバージョンとなっていましたね。


栄光の特急マーク。2015年10月をもって、北近畿地区ともども「くろしお」運用から撤退し、683系2000番台を直流専用とした289系に置き換えられ、振り子非装備であることから、現行よりも10分ほど所要時間が延びているとの事。白浜以北発着の381系使用列車は一足早く同じく振り子非搭載の287系に置き換えられており、速度面では完璧に競走を諦めてしまった感があります。非常に残念でなりません。

最後まで残った全編成に、パノラマグリーン車が連結されていました。
 

かつてはホワイトに黄色と赤のラインを配したものでしたが、リニューアルを機にこの塗装になっていました。


登場当初は「スーパーくろしお」という名前で基本的に新宮発着の速達便に充当されていましたが、後に「スーパーくろしお」は283系使用である「オーシャンアロー」と共に全列車「くろしお」に統一されました。
 

統一後は前述の通り「くろしお」で運用されていた381系が287系に置き換えられたことから、JR西日本の発車表示では「くろしおC」と案内されていました。ちなみに「くろしおA」が287系、「くろしおB」が283系使用列車でしたね。


クロ481形2000番台の血を引くこの形状は、昔から何か惹きつけられるものがあります(正面から見ると平べったいですが・・笑)。


JRマークも。


夜の白浜にて。オーシャンアロー車両こと283系と交換します。しかし、なんでこんな時に限って付属編成同士での代走なのかなぁ・・(^^;;


それでは参りましょう、デッキドアです。昔ながらの金属地のままとなっています。年季入ってますね・・。全駅かさ上げが行われているため、ステップは少しだけ傾斜が付けられたものになっています。


くずもの入れです。この字体が何とも国鉄チック。


向かいには避難用のはしごが設置されていました。海沿いを走るきのくに線らしいですね。


トイレです。中は和式のまま、壁面は「こだま色」に塗られるというショッキングな空間でした。なぜあんな配色にしたのでしょうか・・。


洗面台です。左側のレバーで温度調節ができます。かつての寝台列車みたいですね。ちなみに石鹸は固形です。これまた時代を感じる・・。


381系で必須アイテムといえばこれを思い浮かべる方も多いでしょう。エチケット袋です。381系は「自然振り子機構」というギミックを搭載しており、カーブを一般の車両よりもやや高速で走行できる性能を有しているのですが、この自然振り子機構というのがカーブに入ってしばらくしてから傾き始め、カーブを出てから振り戻るという不自然な動きをする為に乗り物酔いする乗客が頻発、いつでも"コト"に対処できるように袋を設置しているのだとか。


さてさて車内です。遊び心が一切ない所に国鉄の残像を感じます。レジャー利用が多いのにねぇ・・。


デッキ仕切りです。扉は交換されており、センサーによる自動化が行われています。


一部仕切りではスロープが設置されています。微妙にデッキ側の方が高いのでしょうか?


天井です。カバーのかかった蛍光灯に等間隔に並んだ冷房吹き出し口、これだけの潔いほどにシンプルなデザインです。そうそう、荷棚はバータイプのものにパネルを増設しています。荷物の滑り落ちを防ぐためでしょうね。


座席です。元を正せば全国どこでも見ることができた簡易リクライニングシートでして、座面がスライドして一段のみリクライニングされ、体重をかけておかないとバターンと元に戻ってしまうそれが登場当初の仕様でした。帰ってから気付いたのですが、前後の座席で振り子式車両の必須アイテムである持ち手が付いていたり付いていなかったりしています。この違いは一体…


当時からの変更点といえば、「スーパーくろしお」登場時にシートピッチ拡大、リクライニング角度の拡大・及びストッパー付与、背面テーブル増設、座席自体のバケット化と言ったところでしょうか。JR東日本189系に見た目の原型を保っている車両がいますが、その座席と比べると設備的なレベルはワンランク上のものを持っていると思います。ただし、座り心地に関してはやはり簡易リクライニングシートのそれです。素朴な疑問なのが、北陸本線系統で活躍した485系列が軒並み新型のフリーストップ式リクライニングシートとなっていた(いや、間違いなく例外はいますが・・)のに対して、なぜ381系はこの簡リク由来のままなのでしょうか・・。


窓側には簡リク時代のテーブルが残っています。ボックス配置にしたときに便利ですね。ちなみにシートピッチ拡大にともない、窓枠とガッツリ被る修行席も存在します。福知山で活躍した元「くろしお」編成もアコモ改善に伴いシートピッチが拡大されており、「くろしお」と「スーパーくろしお」との違いはグリーン車が非パノラマ車(クハ由来)かパノラマグリーン車(サロ由来)であるかの違いだけでした。


冷房ダクトの関係で、各車両に必ず1箇所は1人掛けが存在します。


全展開してみました。これだけ見ればお得な感じがしますが、通路側にセットされているため窓からはかなり遠く違和感を覚えます。むしろその後ろの窓側の方が脚を伸ばせて快適なのではなかろうかとも思ってしまいますが、シートバックテーブルは無いんですよねぇ・・。


ということで一応ダクトに固定テーブルが設置されていましたが、221系並のキャパなので中々貧弱です。せっかく前列を通路側に寄せて設置しているのですから、もうちょっと大きくしてもいいのではないでしょうか?


シートバックテーブルには沿線の広告シールが貼られていました。


ピンクのヘッドレストリネンはレディースシートです。とある事件が発生してから設けられるようになったわけですが、車両の一部に設定するのに実効性があるのかどうか疑問に思う今日この頃です(隣に来る人の性別が決められているのは安心感を覚えるんでしょうね)。


デッキ仕切り際は固定テーブルが設置されていました。面積は可もなく不可もなく。


シートピッチ拡大のあおりで出てきたデッドスペースを埋めるように設置されたボックスです。ご丁寧に固定式テーブルもあります。別項にも書きましたが、どちらかにレベルを合わせたほうが確実に使い勝手は良いと思います。


最前列ではデッドスペースの大きさも甚だしくなることから、衝立を設置した上で固定テーブルを設置しています。デッドスペース自体は荷物置き場として使用できそうです(明確に示されてはいませんが・・)。


編成中1両に、パンダのステッカーが貼り付けされた車両が存在します。アドベンチャーワールドのパンダは近畿圏では有名ですもんねー。


なんて思いながら車内に入るとビックリ仰天!なんと、パンダがいます・・。


というわけでその座席です。通常の座席にパンダをかぶせたのでしょうね。ここは記念撮影用に設定されたパンダシートで、指定席車内にありながらこの席と左側の座席は指定券販売ブロックから外れています。まぁ、普通に座るとパンダの鼻が頭に突き刺さります(笑) 289系ではこんな気の利いたアイテムは一切無くなってしまいました。


続いてグリーン車です。先述の通り、全編成がパノラマグリーン車となっていました。


乗車時は運よくトップナンバーがやって参りました。


デッキ、トイレです。こちらは洋式に改造されています。


洗面台です。横方向に向けて設置されています。なんだかデザインも観光客向けの華やかなイメージとなっています。


車内です。今や在来線でも珍しくなった全室に2+1の3列配置の座席が並ぶグリーン車でした。前面もパノラマタイプであり、なんだか時代を感じますねぇ・・。


デッキ仕切りです。扉は中央に配置されています。その煽りで仕切り際に関しては1+1の2列配置となっています。その扉ですが、窓が微妙に右へ寄ってますね…。


最前面です。大型の仕切り窓と曲面ガラスにより、圧巻の前面展望を楽しむことができます。


天井です。照明は埋め込み式でスッキリしたものになり、冷房吹き出し口もライン状に配置されています。


荷棚下には読書灯が設置されています。ちなみに、1人掛け上の読書灯も2発設置されています。なぜに?(^^;;


窓です。2席に1枚が配置されています。元々は二重窓で窓の間にベネシャンブラインドが仕込まれていましたが、パノラマグリーン車では早々に一枚窓に変更され、日除けが横引き式のカーテンとなっています。


座席です。まずは2人掛けから。知っている人は知っている、かつて存在した0系「ウエストひかり」仕様車のグリーン席をそのまま移植していました。ウエストひかりのグリーン車に長年乗車されてきた今やそれなりに年輪を重ねた方々には懐かしい一品ではないでしょうか。残念ながら、ウエストひかりが消滅した時私の年齢は7歳。そんなこと知る由も無いですよねぇ・・。


ひとつ気になったのが、色々なサイトを見ていると、700系3000番台のグリーン車と製造型番が一緒ということ。しかしながら、700系B編成にはシートバックテーブルはありませんし、フットレストや肘掛の形状も異なっています。なぜ同じ型番なんでしょうか・・。


続いて向かい側の1人掛けです。


海側にあたる席はこちらで、2人掛けは景色よりもグループ利用を想定したためと邪推してみます。


全展開してみました。座り心地は柔らかめ、クッションを詰められるだけ詰め込みました、と言わんばかりです。腰部分はそれが顕著な気がします。しかしそのツケはリクライニングすると付いてくるもので、盛り上がった腰部分が妙に仰け反ってしまいます。JR四国2000系のグリーン車を思い出しました。デフォルト角度で使用するか、ちょっとリクライニングするくらいがちょうどいいと思います。


2人掛け側でもデッキ仕切り際に関しては1人掛けとなっています。


その前には2人掛け最前列が晒し席にならぬよう、衝立が設置されています。足元にはフットレストが設置されています。基部にグリーンマークが象られているのが特徴ですね。ただ、ここのフットレストは両面とも土足面となっており、ちょっと気の毒なポジションです。


パノラマ最前列はこんな感じ。窓側は折り畳み式のフットレストが設置されていますが、通路側に関してはそれが出来ないので据え置きのオットマンが置かれています。ちなみにこれは土足禁止です。なかなか厳しいポジションですね・・。


窓側のフットレストを展開してみると・・。てなんでこっちも土足面なんでしょうね?(^^;;


乗車列車では一部座席の回転が出来なかったようで、このような張り紙が。乗車中に車掌さんが座面を引っぺがして(!!)中の様子を確認していましたが、どうやら座席回転機構に組み込まれているワイヤーが伸び切ってしまっていたとのこと。かなり満身創痍ですね・・。


2015年10月30日で「くろしお」と北近畿地区から引退となりました。長い間お疲れ様でした。
 
さてここからはオマケ。


かつて381系に存在したパンダシート、287系や289系には引き継がれなかったアイテムで、だんだん列車内という移動空間が味気なくなってしまったのは残念な限り。が、しかしこのパンダシート、実は意外なところでまだ現役だったりします。
 

場所は「くろしお」の終着、新宮駅。出入り口付近にまさかのパンダシート健在です。ほかにも大阪駅の日本旅行デスク内にもいるとのこと。お近付きの際にはここに座って、あの頃の「くろしお」号を思い出してみてはいかがでしょうか。
 
 
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