姜尚中が、少し前の朝日の広告欄で、今の若い人たちの

「ネットワーク力」のようなものを語っていたように思う。

今までにはなかった、多くの異なる分野の人をつないで

新しいムーブメントをおこす力。これが今の若い人たちの強みでは

ないかと語っていた。


その話の中で例えとして出ていたのは、元NHKのディレクターであり、

日本人の自殺の増加を当初のNHKドキュメンタリーなどで製作を

手がけていた人物。清水康之さん。今はNPO[ライフリンク」の代表者

を務めている人だ。http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html

 かつては報道する側の立場から自殺問題をとりあげる番組制作を

行っていた。でもその中で、自殺問題にとりくむ推進役、政策提言を

していく人材がいないことに気づき、自らその旗振り役になるべく

NPOを立ち上げたのだそう。


 そして、彼のもとには精神科医や弁護士、教師などの様々な職業の

人たちが集ってくる―。個々の専門家はたくさんいて、それぞれに何か問題に

とりくんでいても、全体の問題を解決するにはネットワークをして

総合的に当事者を結ぶことで初めて力をもちうることがある。問題を

局所的に見るのではなくて、全体をながめて点を線で結んでいく作業。


そういう「総合力」にこそ、若い人の希望を感じる

と言っていたのには、直感としてすごく納得した。

それに、社会的な問題を解決するためにものすごく熱意を注ぐのだ

ということを指摘していたことにも。


やっぱり名前をつけるつけないに関係なく、

社会起業家的な素地というのは私たち世代に知らず知らずのうちに

生まれているものなのかもしれない。


「ひとり日和」で芥川賞を受賞した青山七恵は

「わたしの世代は、物心ついた頃から日本は落ち目だった」的な

世代特有の風景観のようなものを語っていたけれど、

(要するにバブル的なものとは無縁の風景世界の中で生きてきたということ)

「終わりなき日常を生きる」(by宮台真司)じゃなくて

「何かが終わったところから始まる」的な生き方をしてきたであろう

世代からは、今までにはない新しいエンジン装置をもって始める芽が

育ってきたと考えることもできるんじゃないだろうか。


文学であれ、ビジネスであれ、根底に流れる共通する新しい何かを

感じずにはいられない!


 梅田望夫×茂木健一郎の対談集『フューーチャリスト宣言』(ちくま新書)をさっそく読みました。


本当に今は面白い時代に生きているんだな、というのが読後の実感です。

茂木さんは「グーテンベルグの活版印刷技術の開発」なんかよりももっと

もっと大きい枠組みで、このインターネット社会を「言語以来の革命」(!)

だととらえられているようで。


そこまで言うか!と驚嘆の思いですが、でもそうかもしれないと妙に

納得します。メディアという中で仕事をしていると、ものすごく複雑な思い

にとらわれるのは、やっぱり既存のメディア価値が将来的にどのように変貌

していくのかという未来像です。

 

現に、メディアなんかに属さなくても、個々人でブログを通じて意見の発信

はできていくわけで、そういう意味ではメディアを含め、何かに所属している

ことの意味というのが相対的に低下していくのではないかという思いにとらわ

れます。(このへんのことは本の中で指摘されていた)

 

 もちろんメディア露出することで知名度があがり、結果的にその人の

ブログへのアクセスが増え、コメントなどのフィードバックも増える好循環を

生む、という意味では既存のメディアの役割というのはまだまだ大きいとも

思いますが。

 

 でも、内部にいる立場で思うのは、大きな組織体にしばられてメディアとして

発信できることは各社の思想カラーによって縛られてしまい、結果的に

フラストレーションは絶えず抱えがちだということ。そんな縛りをとっぱらって

自分で発信したいことはあっても、ブログを通じて匿名で何かを書くことで、

そのフラストレーションを少なからず発散するのが精一杯。

 だから、本当に本当に有益な情報なり自分の考えなりを伝えるには、

とりあえずメディアに属するということに大きなプラスを感じられない

という自分がどこかにいたりします。もちろん、普通ならば出会うことの

できない人に出会えるチャンスがあったりと恩恵が大きいのは確かな

のですが……。



 それでもう一つ本の中でああ、と思った箇所は、仕事柄なのか

「本は錨(いかり)をおろすポイント」の役割を果たすというところ。

つまり、梅田さんのブログのところには、絶えず多くのコメントなりの

フィードバックが寄せられるそうですが、日ごろコメントを寄せる人の

層が固定化しがちなところに、本を新たに出版すると、そのタイミングで

より多くの新しい人たちからのコメントが届くようになるのだそうです。 

 それに対して、「本というのはリアルの世界だけではなくて、ネットの

情報の海に、錨を下ろすポイントになるのだろう」という茂木さんの

コメントが印象的でした。



 本は情報が流動化して多くなりがちなところに、一種おもしの作用を

果たす存在であり続けるのかもしれない。雑誌は……。