清元舞踊「かさね」続き。


不思議や流れに漂う どくろ
助が魂魄 錆び付く鎌

雰囲気が変わり、
おどろおどろしく⋅⋅⋅

与右衛門が頭蓋骨を拾い上げ、
添えてある卒塔婆を折ると、
かさねは倒れてしまいます。
さらに、鎌を引き抜いたとたん、
かさねは顔を押さえて苦しみ始めます。

するとそこへ、
2人の捕手(とりて)が現れ、
与右衛門を捕らえようとします。
与右衛門は追われる身のようです。

夜や更けて 誠に文は寝屋の伽
筆の さや焚く煙さえ
埒も中洲の白む東雲

ゆったりした、艶っぽい曲に合わせて、
男性3人の立ち回り。
捕手が逃げる際に取り落とした手紙は、
与右衛門の逮捕を命ずる文でした。
わずかな月明かりに、
文を透かし見る与右衛門。

立ち去ろうとする与右衛門を
引き留める かさね。
自分の顔や姿が
醜くなってしまったことに、
気付いていません。


それそのように余所他に
深い楽しみあればこそ

与右衛門が持っている文を、
よその恋人からの文かと疑います。


とかく浮世がままにもならば
帯の矢の字を前垂に
針打やめておとしばら
駒下駄はいて歩いたら
誠に誠にうれしかろ

浮世がままになるならば、
腰元姿をやめて
与右衛門と暮らせたら⋅⋅⋅

この部分のかさねの踊りは、
足が不自由になり
顔も醜くなりながらも、
それを知らずに与右衛門への思いを
かきくどく、という
技術的にも気持ち的にも
難しい部分。


疎ましくてたまらない与右衛門は、
かさねを殺そうと決め、
鎌を振り上げます。

深手を負った かさねに鏡を持たせ、
醜くなった顔を見せつけます。
そして、
かさねの父親 助を殺したのは自分、
親の敵である自分と関係を持ったこと、
その因果から
かさねの顔が醜くなったと語ります。


〽のう  情けなやうらめしや
身は煩悩のきずなにて
恋路に迷い 親々の
仇なる人と知らずして
悋気嫉妬のくどき言
我と我が身に惚れすぎし

〽人の報いのあるものか なきものか
思い知れやと すっくと立ち
振り乱したる黒髪は
この世からなる鬼女のありさま

こうなった自分の身を嘆きながらも、
執拗に与右衛門を追い詰めるかさね。
帯や傘を使った壮絶な立ち回り。



鎌取り直して土橋の上
襟髪つかんで ひとえぐり
情け容赦も夏の霜
消ゆる姿の八重撫子

土橋の上でかさねを殺した与右衛門は、
何事もなかったように
その場を立ち去ろうとしますが⋅⋅⋅

恐ろしくも哀れなかさねの霊魂に、
呼び戻されるのでした。


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「かさね」
「色彩間苅豆」について⋅⋅⋅