店内は四人がけのテーブルが四つとオープンキッチンで六人が座れるカウンターがあるのだが誰もいなくて店員もコックもいなくてキッチの奥の寸胴鍋なんか何のスープをとってんだか知らんけどもたっぷり沸騰して泡立ってるしまな板の上には何の肉か知らんが赤身の塊に包丁が刺さったまま置いてあるしなんだかなあ。と思いながらすみませーん。すみませーん。と謝りながら周りを見回すと入口の右手に二階に上がる階段があってそこを昇ってみたのだ。んでもって二階は想像以上に広くてってか建物の外見ってか一階の広さに比べて物理的構造的にありえない不可能な広さで高い天井にはゴージャスなシャンデリアがあって可愛らしいお花を模したスタンドランプと薔薇の一輪挿しがオシャレに飾ってあるテーブルがたくさんあって赤いビロードの壁面とか全体的にゴシックな雰囲気がすんごい素敵。とりあえずガキの頃から押入れとかロッカーの中とか狭いとこで少なくても背中と肩と二面がどこかに触れてると落ち着く恥ずかしがり屋のおれだから左奥の角のテーブルを選んでお座りになってみて改めて周りを見渡してコホンとか咳払いしてみたりなんかしちゃったりしてみても誰もこなくて明らかに開店してる飲食店でこんだけ店員がいないってのは明らかに異常なわけでしたらおれだって思わず洗濯バサミで乳首挟んでフルチンでB.B.キングのモノマネでもしてやろうとか異常な発想しちゃうのだがそもそもあまり動きのないB.B.キングのモノマネしてそもそも面白いか? やってもあの絶妙なビブラートでチンコ掴んじゃうだけで大騒ぎだよなと疑問に思っちゃったからもうダメだな。こういうのは瞬発力だからな。とにかく焦げ茶色の合成皮革のカバーがついてる店の雰囲気に比べて安っぽいメニューを眺めてみることにしたのだが特にランチメニューとかなくて一品料理ばっかしなのだけれども洋食屋だからトンカツとかハンバーグとかオムライスとかどれもいーのだができればカツレツとライスあたりで久しぶりにフォークの背中にナイフで器用にライスをペタペタ盛り付けて食してみたくなるじゃんか日本の洋食だからとでもやっぱし肉は赤身の牛が肉食った感が強くおれの野生のソウルを揺り動かすのですかさず素早くランプステーキ200gに決めてすみませーんすみませーんと呼んでみても魂の叫びであっても誰もこないのでやっぱしちょっと暴れてやろうかとメニューを戻してズボンのベルトを外そうとしてふと気がついたのはおれの左手親指の爪の間からかなり太い毛が一本、まあたかが五ミリ程度だけども生てたのだ毛が生えてたのだ。んでも一度気になったら気になるのが人情ってなもんで第一爪の間から生えてるんだぜ爪の間に毛根があんだぜ気持ち悪いじゃんか。こんなときに都合良く毛抜きとか刺抜きとか持ってるわけもなく慎重に右手の親指と人差し指のできれば爪で挟んで引っこ抜くのが理想的なのだがそれは飽くまでも理想であって現実は昨夜に爪を切ってしまったので思いは虚しくなったのだがここで凹むおれじゃあないぜなんせ江戸っ子だからな三代続いた深川大工の小倅だぜ。ってなことで毛抜き刺抜きまたはそれに準じた物でも都合良く持ってなかったけと上着やらズボンやらカバンとかまさぐってみてもそれらしい物はないのだけれどもテーブルの下の壁際のとこにでかいバッグが置き去りにされていたのだいわゆるドクターバッグっての? お医者が往診に行くときに実は肉体関係があるに違いない年の頃は二十代後半から三十あたりの白衣に紺色のカーディガンで意外にも趣味はボディボードとかの看護婦に持たせてるあのバカみてえに蓋がガバっと開く一部のマニアにはたまらないアレなのだ。