能力開発研究所ってな、いかにもいかがわしい研究所なのだが、そこの所長ってのが四十すぎのオヤジで、ってーかおれも今では四十のオヤジなのだが、南新宿のマンションに研究所はあったのだ。
んで代々木にあるマンションのワンルームに独身の所長は住んでいたのだが、当時17~18歳のおれはその部屋をあてがわれ、所長は研究所に寝泊りしていたのだ。
研究所のスタッフは二十代前半でなぜかグラビアアイドルで、カウンセラーもやってて、実は旦那がいるってな訳が分からんスピリチュアルな女性と、パチンコ店オーナーで研究所の経営を面倒見てる、やはり四十代のオヤジとその女房も経理で参加している、総勢四人か。
あとは非常勤の研究員が二人ほどいたはずなのだが、殆どこなかったな。
覚えてないのだ。
とりあえず、おれはイメージの悪魔で右脳味噌の怪物なのだ。
おれが言ったんじゃねーかんね、所長が言ったんだかんね。
んでおれの右脳実験は開始されたのだ。
テレパシー実験。
バカバカしいと思うなよ、そんときはいい大人が集まって真面目にやってたの。
そのクセESPカードとかなくって、てか誰もそーゆーよーなものとか知らなくて、おれはアイドルでカウンセラーでスピリチュアル女に、猿とかポストとか納豆とかひたすらイメージを送るのだ。
女は形容詞ばかりでとりとめのないことばっかし言って、所長は時計を見ながらノートに何か書いてて、経営面でのオヤジと女房の経理がおれたちを眺めているのだ。
ってか闇雲にイメージを送ったってどーするよ、困るだろ。
ある晩、スピリチュアル女の旦那が遊びにきた。
イメージの怪物で右脳の悪魔と評判の少年を見に来たのだ。
したら旦那もおかしなヒトで、車のショールームに勤務している真面目なヒトかと思ってたら、前世はおれと兄弟だったと言い出す。
したら所長の勧めでおれはスピリチュアル女の旦那に、イメージを送るテレパシー実験をすることになったのだ。
夏の夜更けなのだ。
おれは旦那にテレパシーを送ったら、旦那はネコが見えたと言う。
おお、具体的だ。おれはバニーガールをイメージしたのだ。
おお、それは近いじゃないか。おいおい、それって近いのか?
やはり前世は兄弟だったのだ。
そんなあやふやな実験を繰り返したり、豪徳寺にある幽霊アパートにスピリチュアル女と悪魔払いに行かされて、ポルターガイスト? でおかしくなった住人に翻弄されたりして、おれ自体もおかしくなったころ、ある日朝焼けの空を見上げて所長はおれに言ったのだ。
お前、バンドや音楽で喰って行きたいのなら最大限の協力をしてやる。だがな、それは表の仕事で、お前は幻魔と闘う本当の仕事、使命があるんだ。それを忘れるな。
はあ、幻魔?
そのセリフを最後に、おれは能力開発業界から足を洗ったのだ。
ふざけんなよ。
ヤツらどうやって喰ってたんだろ。
あ、パチンコのオーナーがスポンサーだったのかな。
これは実話なのだ。
でもあまりにも、あんまりなので、おれの記憶の自信が揺らぐのだ。
でもその時の記録のスナップ写真とかあるしな。
おれはただ右の耳が聞こえないだけなのだ。