かつて、おれは美少年だったのだ。
それも女子にはモテないタイプの美少年で、同性愛者にモテる。
中学生の頃、後輩のゲイに、お兄さんになってください。と体育館の裏でいわれた。
高校生の頃、修学旅行で隠れゲイの同級生に、寝顔にキスしちゃった。といわれた。
社会人になってから、目黒の呑み屋で隣り合わせたオヤジと、おおいい具合だ。うん、悪くないですねぇ。とかいってチ○ポを弄りあっていたらしいが、泥酔して記憶にないのだ。
よせばいーのにオカマ・パブが好きでよく行っていたのだ。
オカマのみなさんは職業オカマで、朝まで呑んだアカツキには側のバス停のベンチに座り、酔い覚ましの水をガブ飲みしながらタバコを吹かし、訝しげな通勤者にガンくれてたりした。
そのオカマ・パブに一人だけ実物大で本物の真正ゲイ、Tチャンがいた。
ゲイは若く見えるが、田代まさしみたいな風貌で、50代後半だったと思う。
仲は良かった。ヘンに。
よく泊まりに行ってTチャンの手料理で酒を呑み、犯されかけた。
一度マジでヤバイことになり、すんげー拒否したら、敵討ちする? って尻を出された日はそっこー帰ったな。
一度デートした。大江戸線の清澄白川にある深川江戸資料館だ。そこは江戸の町並みが再現されていて、長屋だのなんだのに入ることができるのだ。
そこで地元深川のおれと、浅草のTチャンがやることは決っているだろ。おれが亭主でTチャンが女房の長屋プレイだ。
「おい、仕事にいってくらーな!」
「あいよ、お前さん。気ぃつけんだよ」
ってなワケで、Tチャンが火打石をチャンチャンって打つ寸法だい。
「あのヒト、仕事だっていうけど、どこかで遊んでんじゃあないかしら…」
ってな一人芝居が入って、
「おう、いま帰ぇーたぜ! 今日のまんまはなんでぇ」
「ちょいとお待ちよ、お前さん。お酒の匂いがするんじゃないかい?」
「おうおう、なにが悪いってぇんだい。男の付き合いに口出しすんねぇ!」
ってなことを、昼間っからチューハイ二杯ずつ呑んだおれと50代後半で口髭生やしたTチャンと、アドリブでやるのだ。楽しいぞ。観光客が集まってきて。
その後、呉服屋で
「すまないが、この着物でお金を貸しちゃあもらえないかい」
「こりゃあまた、のっぴきならねぇ事情でもありなすったんかい?」
なんてなことしたり、八百屋で
「おーい、いい大根じゃねぇか。そいつを一本もらおうか」
「大根だけでいいのかい?」
「おかみさん、旦那はいねぇのかい? したらおいらの大根を…」
これはウソです。ここまでしたら叩き出されるわな。
んで一通り遊んだら清澄庭園でTチャンとポップコーン買って、ポリポリしながら池の鯉にやるだよ。
夕暮れの日本庭園に、オカマとおれと二人きり。きゃあ、いゃだあ。と声をあげるオカマとおれと二人きり…。
彼らの思い切った人生の選択には、正直脱帽する。
ここまでピュアで自分に正直な連中は、おれは知らない。職業オカマは別として。
おれはゲイを賞賛する。
でも、おれはノンケだってーの。