すこしだけ明るくなってきた夕方の空
交差点での赤信号を待つ少しだけの間自転車を押すご婦人と一緒になった。
「寒かですね」
お互いに目が合って挨拶を交わす。
自転車を押す手の寒くあるでしょう?と尋ねると彼女は笑いながら、手袋をつけると暑くなるのだと素手で押す理由を教えて下さった。「どこに行きおんなさっと?」といった具合にいくつかの会話を交わすひと時。
子どもさんの御病気をずっと一人で支えていること、色々と抱えておられるであろうご自身の苦労を、ほんのひと時の間に自分が何か力になれるわけでは無いけれども、静かに耳を傾ける。
ほんの数分の間だけ・・・沢山の車が行き交う間に交わされるよもやま話。
ひとりひとりそれぞれに苦楽があって、健気にもたったひとつの自分の人生を生きている方々の何ともいじらしい事だろうかと、頷きながら彼女の話に寄り添ってみる。
歩行者信号が青にかわって、お互いに真っすぐ進みだす。左折右折の車の動きを気遣いながら、小さな体で自転車を押すご婦人と並んでわたる。
自分の親より少し年配だろうか?
わが子の心配はまだまだ続くそうだ。自分なぞ、まだまだ駆け出しに足が慣れてきた程度の未熟者である。子育ての悩みはこれからも続く悩みでもある。実際今も進行形。
「どうかお大事に」
咄嗟に気の利いた言葉が見つからずにありきたりな言葉をかけてしまったものの、ご婦人のご多幸を祈りながら、自転車で走り去る後姿に頭を下げて見送る。
静かな程の凪もあれば、風すさぶ荒波もある。
笑いたくても笑えない時もあれば、泣きたくても泣けない時がある。
こころもさざなみの起きる時があれば波浪にて前も見えぬ時もある。
輝く錦のような海も濁流渦巻く海も全ては変わらぬ海であるように
どのようなこころの様も全ては生きる人々の正直なこころであろう。
それでも・・・人は必死に進み続ける。
立ち止まっているようでも、時はあまねく全てを前に進めていく。
止まってはくれない、だから必死に進み続ける命を全うするまで。
一生懸命と、その言葉が全てをあらわす。
ゆえに・・・だれかの生きるその様はだれかを元気づけるのである。
ありがとう・・・どうかお大事に。
小さな一期一会に勇気をいただいて、また明日もガンバロウ!
