新幹線を降りると
時間の流れが遅くなったような
なんか急にBGMが変わったような感じになる。
天気も良く、
ほのぼのとさえ言えそうな駅前の空気感を
ロータリーに横付けされた黒塗りの車と、
その隣に立つ黒づくめの厳つい男達が
静かに淀ませている。
「達彦さん、政彦さんですね。どうぞ」
無言で目で挨拶をして乗り込んだ兄と自分。
誰も一言も口にしない。
イナカからドイナカへ
黒服の駆る黒塗りは
車中無言のまま進んで行く。
ま、49日なんだから黒ずくめは普通なんだけど、
お前らなんでそんなに無愛想なんだよ!
もしかしてこのまま山奥とかでやられたら
どうしようかな、とかよぎらせてると
ほどなく到着の様子。
着くなり「こちらです」と事務所に通される。
事務所かよ! と内心突っ込みながら気を引き締める。
絵に描いた様な黒い革張りの大きなソファーとテーブルの
高級応接セット。
虎やら滝やら龍やら描かれた間仕切り。
ちょっと笑いそうになりながらも、
レコーダーのスイッチをさりげなく入れ
武器になりそうな物と逃走経路をさりげなく探す。
テーブルの上にはこれまた絵に描いたような、
でも最近はあまり見ない気がするガラス製の大きな灰皿。
これは使えるな、、いや、罠 、、??
などと考えて小一時間経った頃、
パンチパーマで細身の、
絶対入れ墨入ってそうな男が
肩で風を切りながら
ゆっくり事務所に入ってくる。
開口一発
「おー、」「お前らか?」
と来たもんだ。
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父方から連絡があった話を伝えると
母方の親戚からは
罵倒に近い勢いで
そんなとこに実印なんか持って行くな
あいつら(父方)は人でなしで
甘くないどころかヤクザ以下だとか
負債をお前らに押し付ける腹だとか
散々なまでに言われる中、
行政書士から電話を貰って
状況を把握しようと努める。
情報収集は基本。
勿論、長男と二人でそのドイナカに向かうのだが
ゴタになったら長男はいつも自分に丸投げなので
特攻隊長は自分。
敵地に乗り込むつもりで下準備に取りかかりながらも
心の奥底には自分なりの思惑もあった。
その時は自分自身に対してうまく言葉に出来なかったけど
これが親父に会える最後のチャンス。
勿論、もう死んでしまった後なんだけど、
親父がいた世界を覗きに行きたいような
会いたいような気持ちは
死んでしまった後なのに、
押さえ切れなかった。
電話口の行政書士が言うには
親父の弟、自分の叔父にあたる人から頼まれたらしい。
この電話での会話で始めて、
いわゆる腹違いの弟と妹がいる事を聞かされる。
「弟さんはお仕事の関係で世田谷に住んでおられます」
「弟さんも是非会いたい!とおっしゃってます」
世田谷? 当時自分が住んでいたのは渋谷区なので
近いなー。となりじゃん!? とか思いつつも、
仕事の関係で世田谷って、、
役者かミュージシャン? と一瞬思った。
ドイナカに行くついでに北九州に寄り
乗り込む決心を母親に直接告げると、
母は止めたりなんかしなかった。
ちゃんと礼服で行けと、
恥ずかしく無い格好で行ってこいと
洋服の青山かなんかに連れて行ってくれた。
「貸しね」としっかり目を見て言われたが。
着慣れないスーツでいつものガニ股で
北九州の街を兄と歩きながら
鼻からゆっくり息を吸う。
色んな覚悟が自分の中にあり、
戦闘準備態勢にあった自分は
何を見るでもない真剣な眼差しで
ゆっくり口元を引き締めた。
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母方の親戚からは
罵倒に近い勢いで
そんなとこに実印なんか持って行くな
あいつら(父方)は人でなしで
甘くないどころかヤクザ以下だとか
負債をお前らに押し付ける腹だとか
散々なまでに言われる中、
行政書士から電話を貰って
状況を把握しようと努める。
情報収集は基本。
勿論、長男と二人でそのドイナカに向かうのだが
ゴタになったら長男はいつも自分に丸投げなので
特攻隊長は自分。
敵地に乗り込むつもりで下準備に取りかかりながらも
心の奥底には自分なりの思惑もあった。
その時は自分自身に対してうまく言葉に出来なかったけど
これが親父に会える最後のチャンス。
勿論、もう死んでしまった後なんだけど、
親父がいた世界を覗きに行きたいような
会いたいような気持ちは
死んでしまった後なのに、
押さえ切れなかった。
電話口の行政書士が言うには
親父の弟、自分の叔父にあたる人から頼まれたらしい。
この電話での会話で始めて、
いわゆる腹違いの弟と妹がいる事を聞かされる。
「弟さんはお仕事の関係で世田谷に住んでおられます」
「弟さんも是非会いたい!とおっしゃってます」
世田谷? 当時自分が住んでいたのは渋谷区なので
近いなー。となりじゃん!? とか思いつつも、
仕事の関係で世田谷って、、
役者かミュージシャン? と一瞬思った。
ドイナカに行くついでに北九州に寄り
乗り込む決心を母親に直接告げると、
母は止めたりなんかしなかった。
ちゃんと礼服で行けと、
恥ずかしく無い格好で行ってこいと
洋服の青山かなんかに連れて行ってくれた。
「貸しね」としっかり目を見て言われたが。
着慣れないスーツでいつものガニ股で
北九州の街を兄と歩きながら
鼻からゆっくり息を吸う。
色んな覚悟が自分の中にあり、
戦闘準備態勢にあった自分は
何を見るでもない真剣な眼差しで
ゆっくり口元を引き締めた。
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母親に育てられた自分と兄は
親父の悪口を聞かされて育ったのだが、、
いや、悪口と言うより
母にとっては振り返りたく無い過去
と言った感じで
切り取られたり、端が塗りつぶされた写真が
何枚かあったように憶えている。
母方の親戚も総じて
ヤクザ、人でなし、お前は捨てられた。
と言った感じで
それを聞かされながら育った。
親父に関して、
名前や顔どころか
どんな人だったかも憶えていない自分は
反論出来るはずもなく
ましてや親父の肩を持つ義理もなく。
ただ母と母方の親戚の言う事を
自分の知らない情報の一部として
受け取るしかなくて、
そうする事しか出来ない事そのものにすら
気づいていなかった。
ただ漠然と
どんな人だったんだろうと想像していても
それは言えなかった。
いつだったか
何かの話の流れで
「会いたいか?」と母に聞かれた事もあったけど
何が本心かすら考えもせずに、
「別に」と答えた。
母に感謝を忘れた事は一度も無い。
親父に関しては、考える事すら無意識、
いや、意識的に避けて来たんだなと
後に思い知る。
感謝してもしきれないほどの思いを
母親に伝えたいとは思っていても
10代くらいからか
ずっと長い事、
母とは仲良しとは言えない関係が続いている。
少年が男になっていく過程で
ふと母親の事を
これがもし自分の女だったら嫌だなと
薄々思うようになったのを
自分自身に対して誤魔化せなくなった時に
会った記憶もない親父の気持ちが解る気がしてしまい
母に悪いなと思いながらも
会ってみたいと思う気持ちがよぎった。
この時に会っておけばよかった。
ぶん殴るか殴られるかでもして、
好きになるか憎むかしておけばよかった。
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親父の悪口を聞かされて育ったのだが、、
いや、悪口と言うより
母にとっては振り返りたく無い過去
と言った感じで
切り取られたり、端が塗りつぶされた写真が
何枚かあったように憶えている。
母方の親戚も総じて
ヤクザ、人でなし、お前は捨てられた。
と言った感じで
それを聞かされながら育った。
親父に関して、
名前や顔どころか
どんな人だったかも憶えていない自分は
反論出来るはずもなく
ましてや親父の肩を持つ義理もなく。
ただ母と母方の親戚の言う事を
自分の知らない情報の一部として
受け取るしかなくて、
そうする事しか出来ない事そのものにすら
気づいていなかった。
ただ漠然と
どんな人だったんだろうと想像していても
それは言えなかった。
いつだったか
何かの話の流れで
「会いたいか?」と母に聞かれた事もあったけど
何が本心かすら考えもせずに、
「別に」と答えた。
母に感謝を忘れた事は一度も無い。
親父に関しては、考える事すら無意識、
いや、意識的に避けて来たんだなと
後に思い知る。
感謝してもしきれないほどの思いを
母親に伝えたいとは思っていても
10代くらいからか
ずっと長い事、
母とは仲良しとは言えない関係が続いている。
少年が男になっていく過程で
ふと母親の事を
これがもし自分の女だったら嫌だなと
薄々思うようになったのを
自分自身に対して誤魔化せなくなった時に
会った記憶もない親父の気持ちが解る気がしてしまい
母に悪いなと思いながらも
会ってみたいと思う気持ちがよぎった。
この時に会っておけばよかった。
ぶん殴るか殴られるかでもして、
好きになるか憎むかしておけばよかった。
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