“がん難民”とは、適切な治療を受ける病院が見付からない患者のこと。 特に、再発後や終末期にそうした状態になる患者のことを指すことが多い。
日経メディカルの記事より。
上の「適切な治療」には、適切な症状緩和の治療も含まれます。
期せずして、このがん難民に近づいてしまう方がいます。
個人が特定されないよう概略を話します。
ご高齢の方の、頭頸部がんの患者さんです。
治療するのは困難ということで経過観察となったのですが、
この時に「次にどこで療養するか」「最終的にどこでその時を迎えるか」についての話し合いが為されていませんでした。
関わってくれる医療者によっては、それを相談して詰めてくれる場合もあるのですが、
残念ながら患者さんやご家族にお任せ(病院名だけ情報提供)という場合もあるのです。
少し時間が経過し、次第に病勢が進み、日常の立ち居振る舞いが悪化したということで、
「早めに緩和ケアの外来を受診しよう」
とご家族の勧めもあって早期からの緩和ケア外来に来訪。
ところがです。
一見して、全身状態が悪い。
自著やこのブログでも何度か紹介していますが、
命の残り時間が極めて限定されている変化が色々と出ていました。
ところが
もとの病院とのつながりも切れてしまっている状態でした。
このままだと家で急変して最期を迎える可能性が高いです。
そして問題は、それをご本人もご家族も想定していない、聞いていないという状況でした。
そのため、可及的速やかに色々なことを調整する必要がありました。
すぐに、患者さんの居所の近くの緩和ケア病棟がある病院に連絡。
息苦しさなどの苦痛症状も増悪しており、まずは症状緩和を十分に行ってくれる、入院施設があるところが最適と考えました。
その病院の担当してくれた方に、患者さんの状態が非常に悪いことをお伝えすると、ことの重大性・緊急性を鑑みてくれて、すぐに患者さんの診療を受け入れてくれました。
患者さんはすぐにその病院を受診。
入院となり数日後に亡くなられました。
私もかなり状態が悪いと推測はしていましたが、やはりそうだったのです。
幸いにして、手厚い緩和診療のもと、あまり苦しまれることはなく逝かれたとのことでした。
この事例においては、もしそのままみていたら、家で急変して大変なことになっていたと思われます。
また患者さんに適した医療機関に迅速に調整する必要がありました。
それは単に最期を迎えられる場所というだけではなく、十分な症状緩和の医療を提供してくれる場所である必要がありました。
必要な医療機関はどこなのかを知っており、またネットワークを持っている(あるいは迅速にそれを樹立する)必要があります。
もちろんその調整に対応してくれるだろう場所も極めて限定されていると考えられます。
私としては、来て頂いて本当に良かったと思いました。私のところではそれができるからです。緩和ケアの専門家ならではのものです。
(※ただ、このような時間がぎりぎりの状態だと専門家でも調整はかなり難しいです。後述しますように定期的に受診してぎりぎりにならないのが一番です)
医学的に状態がどれだけ悪いかを判断するのは、一般の方にとってはしばしば難しいこともあります。
そのため、患者さんもご家族も、そこまで悪いと思っておられなかったのです。
だから「早く」緩和ケア外来に来られたと仰っていました。
実は、早い見積もりでも、実際はそうではないことはよくあります。
私の実感では、「早すぎ」という場合は全くありません。
この事例においては、ぎりぎりのところで問題を解決できましたが、このような「がん難民」になって、望まぬ時間を迎えてしまうことを最大限回避するためにも、
「苦痛が出たら」緩和ケアにかかろうではなく、症状がなくても定期的に緩和ケアの外来に通うことが有益なのです。
タイトルには「早期からの緩和ケア」と書きましたが「早期からの緩和ケア外来」が正確で、
早期から緩和ケア外来に定期的に通っていれば、もちろんこのような事態に陥るのをかなり予防できると考えます。