皆さん、こんにちは。大津です。

少し前、終末期の予後判断指針を作成しました。
(僕が勤務している病院では、医療者は誰でも
見られるようになっています)
1000人超を拝見してきて、経験的に練り上げ
たものです。あくまで大津版ですから、
その点ご了承頂きたく存じます。けれども、
この指針に則れば、予後判定がかなり的確となる
のではないかと思います。

医療者の皆さんで必要な方はぜひご覧になって
ください。

また一般の方は、取り扱いに注意なさってください。
ご病気を持たれている方は、無理にお読みにならない
ようにしてください。また患者さん・ご家族の皆さん
両方にお伝えしたいですが、生兵法は怪我の元です。

例えばだるさでも色々あります。単なるだるさと
終末期の身の置き所のないようなだるさではだいぶ
異なります。けれどもそれを(一部の医療者も含め)
終末期に習熟していない方が見ると間違って捉えて
しまうことが少なからずあります。

ですから、「だるさ」があるから余命は・・と即断
せず、まずは十分主治医もしくは終末期医療に習熟
した医師の意見をお聴きになってください。
そういう意味で、本指針を届けるべき方としては医
療者、特に医師ということになろうかと存じます。

それでは、下記です。



(繰り返しますが、患者さんやご家族の皆さんは、無理
にお読みにならないでください)



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がん終末期予後判断指針(大津版)

全例に当てはまるわけではないが、予後判断の参考に指針を示す。
 がんの場合は、予後2カ月くらいから急速に状態が悪化する。
 「悪くなり始めると早い」「悪くなってから色々準備をしても間に合いにくい」
 これを医療者間・家族間・場合によっては患者と共有する必要がある。


① 余命短い月単位(余命1~2カ月以内)

・疼痛以外の苦痛症状の出現(疼痛は余命が比較的あるうちから出現するために、あまり予後判断の参考とならない)。例えば全身倦怠感や食欲不振などが出現する。ただしこれらの苦痛症状がステロイドに反応して、ある程度軽減される。また化学療法施行中はその副作用で全身倦怠感や食欲不振などが認められることもあるので、その影響を除いて判定する。
・ADL(日常の立ち居振る舞い)が多少なりとも障害され始める。
・気力の枯渇等から外出が減り、家の中での生活がメインとなる。寝て過ごす時間が多くなる。
・一般的には、「やりたいことを何とかやれる」のはこの時期。例えば最後の旅行など。もう一段階状態が悪化した週単位ではやるべきことをやろうとしても一般に困難になる。在宅移行・転院・一時退院にふさわしい時期。



② 余命短い週単位(余命1~3週間以内)

・疼痛以外の苦痛症状の増悪が認められる。特に全身倦怠感が強くなる。これらの苦痛症状がステロイド投与でも、あまり改善しなくなる。
・ADLの障害が目立ってくる。トイレ歩行も困難になってくる。
・ベッドで臥床している時間が多くを占めるようになる。
・声帯のやせからの嗄声や、耳管の調節機能の低下による耳の異和感や異音の聴取、体力低下に続発する視力低下(ぼやける・かすむなどの表現を取る)などが出現する。
・見当識障害も程度差があるが出現し始める。せん妄・混乱に至る患者も存在する。
・一般的には、「最低限ならば、やり残したことをやれる」限界のライン。外出泊が何とかできる程度。在宅移行・転院・一時退院ができないわけではないが、ぎりぎりの時期。



③ 余命日単位(余命数日以内)

・苦痛症状が一番強くなる。特に全身倦怠感が強くなり、身の置き所のないような表現を取ることが多い。また痛いと訴えるが局在がはっきりとせず、身の置き所のなさが「痛い」という表現を取っていることがしばしば認められる。これらの苦痛症状はステロイド投与でも、緩和されない。余命24時間前付近が、苦痛が最大となる時間帯であり、鎮静(最低限間欠的なものでも)を考慮すべき時間帯である。せわしなく体を動かされたり、足が重だるく感じて看護者が動かすのを希望されたりというような表現も目立つ。
・ADLの障害は顕著である。ベッド上から動くことは難しく、また動けないのにトイレへ行こうとして苦しまれることもある。
・表情は一般的に苦悶状。眉間にしわが寄っている。
・寝ているか、あるいは身の置き所のなさ・全身倦怠感で苦しまれるか、というどちらかの状態。
・意思の疎通は通常困難となってくる。せん妄・混乱の頻度も高くなる。
・急変も起こりやすいので、看取りに居合わせたい家族はなるべくそばにいたほうが良い。



④ 余命時間単位(余命1日以内。ほぼ数時間程度。一般の表現で“時間の問題”)

・意識レベルが低下し、苦痛症状を訴えなくなる。
・体動が消失する。
・苦悶状の表情がなくなる。眉間からしわの消失。
・声漏れ(強い息に伴うアーアーの間欠的発声)が出る。これは辛さのためではない。家族に伝える必要がある。
・死前喘鳴(咽頭部のゴロゴロ音)が聴取される。これも意識が低下していれば、苦しくはない。
・橈骨動脈や上腕動脈を触知しなくなる。
・尿の流出が止まる。あるいは、相当低下する。
・看取りに居合わせたい家族はそばにいたほうが良い。
・呼吸は一般的に浅く速いである。呼吸が下顎呼吸となり、1分あたりの呼吸回数が数回程度となれば、分単位である。


※これらの時期は、終末期医療に習熟した複数の医療者で、また緩和ケアチームとの相談で、目安をつけるのが望ましい。

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どうか有効にご活用ください。