アメリカの採った戦略の基本は1-2/6でも書いたとおり、
ニア-サイドにスペースを作ったことで、
これは各専門家の方々も論評を書かれています。
 
下図にアメリカの敷いたシフトと、なでしこのマーク状態を示します。
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動画で確認したい方はFIFAのHPから。
FIFA HIGHLIGHTS 決勝戦
 
特徴的なのは、攻撃側9名がペナルティーエリア内か、その付近に居ることです。
これはアメリカにとってギャンブル的な配置と言えます。
セイフティー(速攻対策)要員が1人しかいないのだから。
 
以下の前提に立ったのでしょう。
①なでしこのシステムは、3人がゾーン配置される。熊谷・阪口両選手を
  ゴール中央とニア、宮間選手はゴールポストに張り付くか、壁に立つ。
②他の7名はマンツーマンなので、
 アメリカ選手8人(コーナーキッカーを除く)を投入すれば、
 なでしこも全員ゴール前に貼り付く。
 なおかつ、どこかに1人余るか、宮間・熊谷・阪口選手のいずれかを剥がせる。
③なでしこには逆襲の驚異になるような、一人で決めきれる選手がいない。
 
これらの前提の下、アメリカはニアにスペースが空くよう配置したのですが、
実は、ニアのアウトサイド:大野選手のところが2対1になっていて、
アメリカの選手が余っています。
ディフェンスの原則は「ニアサイドから」に反するディフェンスシフトです。
アメリカ的には、わざわざロイド選手を遠目に配置して、
マークが付かないようにする計画だったように推測しますが、
岩清水選手が付いてしまったため、
やや計画(練習してきたパターン)と違ったのだと思います。
 
実戦では、ロイド選手が岩清水選手に先着してシュートを決めます。
ですが、1対1の駆け引きに勝ってのことです。
岩清水選手はマークが間に合わなかったことで非難する向きもあるようですが、
ニアに回らず、ロイド選手に付いたことは、
監督指示だったか、岩清水選手の「野生の感」だったのかも?
もし後者なら、実らなかったファインプレーだったかも知れません。
 
 
イメージ 1
 
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このプレーで注目したいのは、ボールは来なかったが、
ゴール正面。宇津木選手のマークしていたモーガン選手と、
有吉選手がマークしていたヒース選手が、
余っているはずの熊谷選手の方向へ動き、
5名の混乱した状況を作り出していることです。
 
結果、宇津木選手が熊谷選手にぶつかって、
熊谷選手がボールへアクセス出来ないように無力化された上に、
モーガン選手をフリーにしています。
 
ちょっとできすぎの感はありますが、
アメリカンフットボールやバスケットボールを想起するプレーです。
 
なお、ヒース選手はブロッカーとしてすごく優秀なように見えました。
モーガン選手はマークマンを静止した選手に交錯させる動きに、
妙味を見せています。
 
なでしこ的には、熊谷選手のポジショニングに最も問題があります。
監督・コーチの指示通りの位置に居たのでしょうが、
機転を利かせ、巻き込まれないような位置取りをすべきです。
 
また、有吉選手は、宇津木選手に対しコミニュケーションを取って、
交錯しないようにリードすべきですが、出来ていません。
(歓声で無理だったかも知れません)
 
以上です。
 
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