Black Magic M-66 | 夢の大地

夢の大地

ガンプラ、TRPG、MTG、コンシューマゲーム、他、気が向いた時に色々とつらつら書いていきます。

SFアニメ好きなら誰もが知るかもしれない士郎正宗(しろうまさむね)氏

が1987年に共同監督・脚本をしたOVAがこの66です。

当時はDVDではありません。 VHSビデオテープです。

作品の大元の根っこは、ブラクマジックという同人誌の系列に当たる同氏の

作品にあたります。

この作品の凄い所は、1987年当時の作品は当然セルアニメであり、1枚1枚

を手で描いて行くのが当然です。 この時間的長さのアニメなら5000枚

程度のセル数になるらしいのですが、この66の使用セル数は何と2万枚!

1984年に公開された劇場版マクロスの「板野マジック」と称された戦闘機の

斉射する無数のミサイルの軌道追従のセルワークなどは伝説的な語り草に迄

なっていますが、66はOVAという「少な目のパイ」であるにも関わらず

伝説と張り合う程の動きを見せている「凄まじい」作品です。

 

暴れる66(正確にはF6-402号)を拘束する為の「ワイヤー」の斉射が

確認できると思いますが、この1本1本が全て1セルの上に描かれていて、

しかも破綻の無い動きをしているのは、原画とセルの苦心の成果でしょう。

現在ならセルルックや、場合によってはフルCGなら楽かもしれません。

「セル」を何枚重ねても画質が落ちる事は無く、必要であればコンピュータ

の処理速度が許す限りいくらでもセルを重ねる事ができます。

しかし、当時はセル画を重ねれるのはせいぜい6枚7枚程度で、下のセルの

絵を綺麗に透過させる必要上、それ以上セルを重ねる事が難しかったと聞き

ました。 だから当然、ワイヤー1本1本を別々のセルに描く事はしにくく、

いきおい1ミス1キルになるので大変だったでしょうね。

そんな中でも、まるで歌舞伎の連獅子のような66の長髪の流れの中に、至

近距離から撃たれた反動でわずかの秒数だけ折れる程後ろに弾かれる頭部。

見えるか見えないかの細かい演出が続きます。

やられる役とはいえ、特殊部隊員のアクションも凄いです。

 

こちらもワイヤーの数が凄い事になってます。 

66がワイヤートラップを引きちぎる時の破片の飛散や、パコの蹴った「ド

ーナツ」の力場に弾かれる66が内壁に叩きつけられますが、次々シーンで1

秒程処理されている66の周囲のコンクリート片の細かい演出。

特殊部隊員とは言え、名も無いモブキャラ2人を手玉に取る66の体術の動

きも凄いですが、隊員が倒れる時の動きもお見事。

しかもこの数秒のシーンで、細かくパース(遠近法における視点の位置)が

変化している事がわかると思います。

繰り返しますが、これ全部手描きです。

 

直後のエレベーター内での、ドーナツを挟んだ睨み合い(?)シーン。

エレベーターの内壁が回転しつつ、66がそれに合わせて移動し、それに対

する主人公シーベルの視線も破綻がない。 手描きでよくここまで出来たも

のだと感心するしかない気持ちです。

ちなみに66さんは片目にレーザーが仕込まれており、前々述の野外の戦闘

シーンでは隊員を瞬時に焼き殺したり、前述のワイヤートラップを焼き切っ

たりと効果的に使っていたのですが、この至近距離で攻撃対象のヒロインに

対して使用しないのです。

後の劇中のセリフで「オーバーヒート」が言及されていたので、そういった

演出や伏線回収、行動の理由付けなどもしっかりなされていました。

 

 

 

主人公シーベルは榊原良子氏、説明の必要なし。

ブロンドに鉢巻(?)のヒロイン・フェリスは横山智佐氏、しかもデビュー作。

デビューの割には演技力に全く不足無し。 随時絶賛募集中のマスプロダクト

的に感じる最近の事情と違い、当時の、訓練から初出演までの体制が余程の物

だったのかと感じます。

特殊部隊隊長には故小川真司氏、アニメでは脇役が多い印象を持っていますが

吹き替えでは主役級も多かったように思います。 私にとって好きな男性声優

さんも多いのですが、多分この方がギリギリでトップです。

特殊部隊の副長には故曽我部和恭氏、ワッケイン司令。

66の開発博士、フェリスの育ての祖父に故永井一郎氏。

他にも鉄壁ミュラーの水島裕氏、 金銀妖瞳ロイエンタールの若本紀夫氏、 第

13艦隊次席幕僚パトリチェフの塩屋浩三氏。

今から考えれば凄まじい声優陣ですね。

 

 

現在はDVD版等が密林でも発見されていますので、ストリーム等も含めて

現役で入手・視聴が可能です。 こんなにも昔の、手描きの作品が、どれだ

け動くか見てみる事も容易ですヨ。(*´ω`*)