Zプラス (誰が為の宇宙の輝々-4) | 夢の大地

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ガンプラ、TRPG、MTG、コンシューマゲーム、他、気が向いた時に色々とつらつら書いていきます。

Zガンダムの再生機、リルZの僚機ということでZプラスを作ってみました。

元々Zプラスはほぼグレー1色というすきいりしたカラーリングなので、私もそれ

が好きでしたが、まあいつもの塗装に寄せて、胸部周辺をはじめ細かい所の塗装を

変更してほぼツートンの仕上げになっています。 スリッパの青色は気に入ってい

たので、そのまま残してあります。

 

元々、UC版Zプラスは目が赤いのですが、緑に変更しました。

いつものシールを適当にハサミで切って貼っています。 上手く行ったと思います。

アンテナは他のガンダムタイプと違い、元々からこういう形だったと思うので今回

は尖がらせていません。

 

少し色を追加しただけですが、かなり印象が変わっていると思います。

顎とコクピットの赤。 胸部と後部バインダー部、膝のグレー。

翼面前縁の黄色。 塗った面積はさほど多くないんですけど。 (*'ω'*)

 

背部にバックパックはありません。 全推力が脚部に集中していますね。

ALはアヴァロン所属機の略号です。 赤いラインはデカールです。

 

比べて頂けるとわかると思うのですが、ビームライフルは銃身を短くしています。

でも、だいたいこれで標準的な大きさだと思っています。

自分設定では、これが先行量産型で、ギロチンバースト可能なように、更に収束

率を高めるよう長銃身化した改良型がリゼル用の量産型です。

 

何となく貼ってみた右脚のEFSFマークが気に入ってます。

 

ビームライフルを構えて突撃するC1型Zプラス。

 

本来シールドではないのですが、大気圏内ではないので、壊れても空力に問題は

なく、宇宙戦では堂々と盾として使っていいと思います。

                      コストは考えるな…φ(・ω・ )

 

腰のビームカノンは結構可動範囲が厳しいので、時間があったら手を加えたかっ

たかもしれません。 センチネル独特の青いビームサーベルが格好良いです。

 

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0089.10.18 1112 ガンビア正面宙域 ============

残存稼働機18機を率いてフライターク大尉が出撃した。
黒いマラサイに率いられた新旧様々な18機のMSが、連邦艦隊の正面から仕掛け
るコースをとる。 
「全機、今度は最後まで退く訳にはいかない。 脱出する味方を追撃できなくなる
 まで、敵MS隊への攻撃を続行する。」
ロージヒカイト大尉は予定通り別行動を取るが、今度は牽制やイヤがらせが目的で
はない。 連邦軍の「あの小隊」がガンビア表面で孤立した連邦軍MS隊を救援し
た時に実施したディープストライク戦術をそのままお返しする。 側面から機動力
で敵を突破して敵艦隊に打撃を与える。
リニアシートのモニターに、至近距離で映る僚機に向けてロージヒカイト大尉が簡
素な指示を出す。
「クローブ、コンフリー、何があっても脚を止めるな。 速度を落とすなよ。」
先頭を切るバウの指揮下、続行するのはわずか2機のガザC。 

0089.10.18 1113 アヴァロン艦隊 =============

アヴァロン艦隊の後方、少し距離を取ってカルダモンとその随伴艦が続行する。
「敵MS隊が再出撃しました。 MS隊独自にミノフスキー粒子を散布しているよ
 うです。 熱反応は20以上確認。 高速の数機が主力から分離しました。」
アヴァロンの艦内に、続いて宙域の全艦に独特の警報音が響きだす。
第一戦闘配置を宣言したマクファーソン大佐は、続いて頼みのMS隊長を呼び出す。
「テレジア中佐。 第1陣としてこの艦隊のMS隊全機で敵主力を分断しろ。 残
 存MS隊をまとめて第2陣とし、艦隊の防空はカルダモン隊に任せる。」
「了解しました。」
マッキーナ中佐が忙しく艦内の戦闘配置を下令している。
「カルダモンのプラット大佐にも連絡を。」
すぐにカルダモンからも「テレジア中佐指揮下」のMS隊が出撃を始めるだろう。

「完全な整備が出来ず申し訳ない、との事です。」
コクピット内のホーバーム少佐に、発艦管制員が整備部隊長からの伝言を伝える。
「十~分、十分。 次の整備で宜しくって伝えといて。」
「了解です。 第一中隊テレジア隊発艦完了! 続いて第二中隊ホーバーム隊、発
 艦どうぞ!」
与圧区画に、MSを加速させるカタパルトの轟音が轟く。

リルZを駆るテレジア中佐には2つの心配があった。
1つは、主力とぶつかるのはともかく、側面に出た3機、あれは例の変形機を集中
運用している部隊に違いない。 これがどう動くかが気になった。
もう1つは、例のギャプランがどこにいるか、だ。
「・・・ヤツは必ず、出てくる。」
僚機C1(ゼータプラス)に搭乗するシルヴィア・スワイガード少佐は即応予備か
らの現役復帰組といえ、一撃離脱戦のプロフェッショナル。 もう1機のC1に搭
乗するドリス・オーガスタス大尉も、MSパイロットとしてデラーズ紛争時から実
戦に参加しており、アグレッサーも務めた練達の技量を持っている。
ホーバームは問題ない。 あの化物が現れない限り、傷付いているとは言え、彼女
のMkⅡは滅多にやられる事は無い。
その指揮下の86R(ジムⅢ)は1機がディエン・ヴァン・トーン中尉、エウーゴ
に参加した頃から守勢に強いパイロットで、これも滅多には墜とされないだろう。
少し心配なのは同じ86Rを駆る最も若手のアレクシア・メルセデス中尉。
技量は折り紙付きの若手エース候補で、模擬戦では幾人ものベテランに勝利を収め
ているが、白兵戦技でホーバームを追い抜きたいと言う向こう意気は良いが、実戦
でホーバームに追いつこうと無理をしないかが気がかりになる。
前回の交戦ではムサイ級1隻を沈める殊勲を上げたが、それは敵艦隊にMSの随伴
が無かった事と、より実戦歴の長いトーン中尉が背中を守ってくれた事も大きい要
素だった事は本人も理解している。
逆にそれが何らかの焦りに繋がらないか・・・。 そういえば、一年戦争の頃のス
ミルノワも良く突っかけて行く性分だった。 当時のマクファーソン少佐もさぞこ
んな思いをした事だろう。
あと数分で戦闘に入るタイミングで、テレジアは少し皮肉気に微笑んだ。

0089.10.18 1115 ゼータプラス・コクピット内 =======

シルヴィア・スワイガード少佐は、デラーズ紛争以降に一旦予備役に退官していた
が、ダウンフォール作戦の為の機動艦隊の編成時に、旧知のマクファーソン大佐に
乞われ、再任官されその指揮下に入った。
アナハイム・グラナダのマリーネに対する、戦術機動力に優れたMSの手配、と言
うマクファーソンからのリクエストの中にも、スワイガードの能力が織り込まれて
いた。

ガンビアからのジオン残党軍の多数のMSの光点が、正面から接近してくる光景が
リニア式のモニター正面に映し出される。
かなり遠方の宙域を3つの光点が移動していく。
「分離した敵の別働隊は艦隊直掩のカルダモン隊に任せる。 このまま正面の敵中
 央を突っ切り、敵MS隊を分断する。 第一小隊、先行する。 第二小隊、ホー
 バーム、敵に傷口を塞がせるな。 臨時混成大隊アルハンブラ少佐、目標の選択
 は随時任せる。 分断する敵MS隊の片方に攻撃を集中せよ。」
ワイプモニターの中のテレジア中佐が、次々に指示を出す声がコクピット内に流れ
ていく。
「正面の敵主力さえ叩けば、別働隊は撤退するしかなくなる。 その間の艦隊防空
 はカルダモン隊だけで十分。 それなら全力で早急に敵正面を撃破するのが最も
 確実という事か。 そうなれば単独で行動しているあの「化物」がどこにいても、
 もはや単機ではどうしようもないだろうな。」
得心いったスワイガード少佐は、あらためてモニター内の敵の光点に多少の緊張を
含んだ視線を戻した。

敵部隊との距離を表す数字が小さくなっていく。
最大射程に入った敵機を囲むコンテナが六角形に表示されだし、射程や火力を含め
予想される脅威度の高い目標のコンテナは赤く表示される。 もう何個かは赤くな
っている。 前方を行くテレジア機が高G機動に入る。
敵機にロックされた警報音が鳴ると同時に、スワイガードも3つの目標を追尾しな
がらその内の1機をロックし、機体を猛烈な機動に入れ交戦に入る。

0089.10.18 1118 MS部隊戦闘宙域 ============

先頭を切るテレジアの駆るリルZと、先頭を切るフライタークの駆る黒いマラサイ
とが急速に接近する。 リルZの後方に続行する2機のZプラスも射撃を開始し、
先行量産された新型ビームライフルが高収束されたメガ粒子を放つ。
残党MS隊の火力が集中してくる。
黒いマラサイはバックパック右側に、臨時に無理矢理取り付けた一年戦争時代のM
S09R用のヒートサーベルを取り出し、テレジアの気を引くためか左手に装備さ
れた連邦製ビームライフルを連射してくる。 
黒いマラサイは速度を落とさず、リルZとの白兵戦距離に飛び込み、同時にヒート
サーベルを振り抜いた。 リルZはその一撃をビームサーベルで捉えて受けたが、
振り抜いたビームサーベルは、マラサイのパージしたヒートサーベルを弾き飛ばし
ただけだった。 マラサイはヒートサーベル1本を捨て駒として、最も厄介と判断
していたリルZを一瞬で突破した。 両機の持つ猛烈な相対速度が、あっと言う間
に距離を開かせていく。
突破されたリルZは、人間の反応とは思えないような敏捷性で、運動ベクトルはそ
のままに機体だけを360度回転させ、その中途の一瞬180度の点で腕部のグレ
ネードを2発、マラサイの背中に向けて放つ。
発射時の速度差が悪く、グレネードは容易に回避されたが、さすがのフライターク
も焦った。 まさかこんな反応が返って来るとは思っていなかった。 そして、そ
れを回避した自機の目の前に、ビームライフルを構えたZプラスの1機が現れた。
集団戦の恐ろしさの1つがここにある。 単機の威力だけでは計算できない数の力
が働くのだ。 息をつく間もない。
「Zの次は、Zモドキか!」
ビームライフルを連射しつつ、今度はシールド裏のビームサーベルを引き抜く。

至近距離でのビームライフルの撃ち合いは、スワイガードのC1にも、敵のマラサ
イにも、お互いに直撃こそ与えられなかったが、MSの融合炉への負担の度合いは
旧式のマラサイの方が大きかった。 激しいビーム兵器の撃ち合いで、表面にこそ
現れにくいが、C1に比べマラサイの心臓は酷使されている。
C1の装備する新型ビームライフルの先行量産型は、更に改良を加えられた後にリ

ゼル型の機体へ標準装備される高出力の型だった。 試験におけるその貫通力は、

従来のビームライフルよりもずっと大きかった。
スワイガードの放った7発目のメガ粒子の塊が、マラサイの左肩に固定されたシー
ルドの上半分を吹き飛ばし、8発目が左足の装甲板を弾き飛ばす。 
「ちっ! やられたか!」
振動と破壊音はある程度リニアシートが吸収してくれるが、軽微とはいえダメージ
には違いない。 瞬時にすれ違った一瞬で、距離はあったがお互いのMSのメイン
カメラの視線が交差した。
「旧式の機体をこれほど操るとは。」
スワイガードのつぶやきは、自分が仕留めきれない敵パイロットへの称賛であると
同時に、どこか淋しげな雰囲気も含んでいた。
その視線の先では、オーガスタス大尉のC1と切り結びながらも、一瞬ですれ違う
黒いマラサイがいた。
スワイガードはリルZに続行しながら戦闘を継続するが、オーガスタス機と切り結
んだマラサイに違和感を覚えた。 どう見ても、この小隊が最精鋭に見えるだろう。
その小隊各機と、ただただ派手に斬り結んで離脱する。 何の意味がある?
テレジア中佐や自分に、旧式機で平気で突っかかって来る、おそらくはエースパイ
ロット。 それがただちょっかいを出すだけなのか? 

その時、戦域に恐怖を伴った通信波が広がった。
「ギャプラン! 艦隊3時方向! 上下+30!」

0089.10.18 1120 アヴァロン艦隊前方 ===========

アヴァロン艦隊の少し前方で警戒管制にあたっていたカルティアイネン中尉は、乗
機ネモAEWのあらゆるセンサーが捉えた情報を分析処理していた。
3機の別働隊は派手にミノフスキー粒子を撒きながら艦隊に向かってくる気だろう

が、その戦力は既に分かっている。 指揮官機のバウ1機と、ガザCが2機だ。 

最初の内ガザCは3機確認されていたが、リルZが初戦で1機撃墜しており、おそ

らくは予備機も無いであろうから、2機の随伴は納得できる。 それなら艦隊防空

のカルダモン隊だけで十分に対処できると考える事に無理はなかった。
「ベリングドッグ1より臨時混成大隊アルハンブラ少佐。 分離した敵主力のうち
 太陽方向の敵部隊の方が総合的な脅威度が高いと判断できます。」
「了解、ベリングドッグ。 情報に感謝する。」
「アヴァロンへ、別働隊がわずかに加速しています。 そろそろ来ます。」
既にアヴァロン艦隊の全対空砲火はその砲口をまだ光点にしか見えない別働隊に向
けている。
モニターの中にワイプ画面が開き、マクファーソン大佐が映し出される。
「カルティアイネン中尉、艦隊後方に後退し、直接戦闘は控えろ。」
見かけより機体重量が大きく、重量バランスが大きく変化しているAEW型の機動
力や戦闘力が、原型のネモよりも更に低くなっている事は、パイロット上がりのマ
クファーソンにとっては手に取るようにわかる。 
貴重な艦隊の目を、無駄に失う訳にはいかない。
「了解しました。 アルバレス少尉、艦隊の後方へ向かう。 続け。」
アヴァロン艦隊とその防空にあたるカルダモン隊の更に後方へ、護衛のアルバレス
少尉の黒いネモと共に移動する。
しかし、気になる。 モニター上の光点、何かいつもと違う気がする。 何だろう?
わずかにボヤける時があるような気がしているのだ。 しかしあらゆるセンサーが、
別働隊が3機である事を示してる。 まさかモニターが劣化してきているのか?
メインカメラ以上の光学索敵力を持つが狭い視野しか持たない望遠カメラを、高速
度の敵編隊に手動で向ける。 ブレる映像の中の更に加速する光点は3。
「3。 3機か。」
先頭の機体の長い噴射炎、後方ガザCと思われる2機の噴射炎。 ほとんどの場合、
それの長さは機体の推進力を表している。 

噴射炎、バウの噴射炎、バウにしては・・・、少し大きくないか?
先頭の機体がアヴァロン艦隊の方向にブレイクし、光点が実体を晒し機首を向けた。

後方の2機もそれに続く。 バウとガザC。 噴射炎は3機分しかない。 

しかし編隊から分離し、さらに後方のカルダモン艦隊方向に向かう赤外線反応がは

っきりと見えた。 スラスターを一時的に停止しても熱せられた機体後部が赤外線

を放っているのだ。
絶対に間違いない! 常識ではありえないが、ヤツらは宇宙速度のまま、接触する
距離での編隊飛行をしてセンサーを欺瞞したのだ。

「ギャプラン! 艦隊3時方向! 上下+30!」
艦隊全艦と全MSに最大出力で警報を発する。
「ベリングドッグ1よりカルダモン! 別働隊から分離したギャプランがそちらを
 指向している!」

全方位に発せられたその通信波を捉えたフライルーのコクピットのハドロン中佐は、
連邦のスクランブルまでは解除できなかったが、その「雑音」の大きさが、その内
容を雄弁に物語っているのを理解した。
つまり、隠れる必要がなくなったということだ。
バウの上で接触状態を維持したまま、ずっとバウの推進力に合わせた出力調整をす
るというサーカスをしてきた甲斐があったというものだ。 艦隊の直掩隊だけで対
処できる程度の小さな戦力なら、連邦の主力連中が無視するだろうと張ったのは正
解だった。
強化人間用レベルに調整されたフライルーの全てのスラスターが、爆発的な推進炎
を吹き出す。

0089.10.18 1125 MS部隊戦闘宙域 ============

「ヤツはどこにいたんだ!」
3機を同時に相手取り、1機を中破させ、1機を撃墜したばかりのテレジア中佐も
さすがに焦った。
「アヴァロン! 第1小隊は艦隊の防空に回る。 ホーバーム少佐、アルハンブラ
少佐、敵主力を抑えておけ! 艦隊に近づけるな!」
どこかから来るのはわかっていたが、いきなり後方の艦隊至近に現れるとは!
「スワイガード、オーガスタス、すぐに艦隊の防空に回れ!」

オーガスタス機が即座に攻撃中の敵MSに対する追撃を中止し、変形すると同時に
機首を艦隊方向に向け、推力を全開にする。
スワイガード機もそれに続くが、オーガスタス機よりも敵部隊の奥に入り込んでい
た為、わずかに距離が開く。
そのスワイガード機のモニターに、後方のリルZに接近するマラサイが映った。
「まさか・・・、まさかヤツら全てが囮か。」
それなら、黒いマラサイが限界以上に派手に目立って動いていたのもわかる。
そして今また、集団戦を隠れ蓑にして、一度離脱したリルZ相手に、タイミングを
合わせたかのように再度接近する機動も。
主力隊も、別働隊も、ギャプランを艦隊に接近させるのが何よりの目的だったのか。
C1を変形させたスワイガードは、わずかに遅れてオーガスタス機に続行する。
「オーガスタス大尉。 艦隊防空とは言うが、我々の目標は「例の化物」だ。 し
 かし中佐が追いついてくるまで深追いはするな。」
「了解しました、スワイガード少佐。」

0089.10.18 1125 カルダモン艦橋 =============

「カルダモン」の艦橋でプラット大佐はノーマルスーツのヘルメットのバイザーを
おろした。 焦っているのか、怒っているのか、自分にもわからなかった。
「冗談じゃない! 直掩隊は全て前方に配置されているんだぞ!」
後方は安全だろうと高をくくっていたが、この状態だと一番危険な位置にいるのが
自分達だと一目でわかる。
「艦隊最大戦速! 方位000! 早急に第54艦隊との距離を詰めろ! アヴァ
ロンのマクファーソン大佐に直掩隊を返すよう言え!」
敵のMS隊を再度確認した時、自分の安全の為、少しだけ多めに第54艦隊と距離
を取っておいたのが裏目に出た。
間抜けの乗ったアイリッシュ級戦艦「キャラウェイ」の最期が思い出される。
「ちっ! あんなヤツに付き合って死んでたまるかよ。」

もちろんマクファーソンは既に艦隊の直掩隊をカルダモンに差し向けていた。 

アヴァロン自体が3機の別働隊の攻撃に晒されるのを覚悟のうえで。
しかし、アヴァロンはテレジアの第1小隊が戻ってくるまで耐えきれば良いのだ。 
万やむを得ず、カルティアイネンの第3小隊もアヴァロンの防空にあたらせる。
元々カルダモンを母艦としている連中に、目の前で母艦が危険に晒されているのを
見ておけとは酷な上に、カルダモンとその護衛のサラミスだけでどれだけの要員や
負傷者が乗っているか。
しかし、今までの戦訓を鑑みる限り、臨時に隊長を引き継いだヘック大尉率いる2
機のネモと4機のジムⅡに、どこまで期待できるかは甚だ疑問だった。

「せめて、時間だけでも稼いでくれれば・・・」

マクファーソン自身、もし予備機があれば出撃したい気持ちだった。


0089.10.18 1125 カルダモン艦隊 =============

アヴァロン艦隊へ近付こうと、必死に続行するカルダモン。
搭載された主砲やミサイルだけではなく、まだ射程に入ってない対空砲までが火箭
を放つが、避けられるというより、ほぼ相手にもされていない有様だった。
十分に速度を付けたフライルーはMS形態に変形し、左腕に固定装備された独特の
ビームライフルと、右手に装備した「連邦軍標準のビームライフル」を連射しなが
ら、機体をひるがえしてカルダモンに襲いかかる。 
元々固有の右腕装備のビームライフルは、前回の戦い中盤、ホーバーム少佐に斬ら
れたままで、予備部材も時間も無く補修が不可能だったのだ。
だが、高速を維持したまま接近するハドロン中佐の放つメガ粒子のほとんど全てが、
カルダモンとその護衛のサラミスに着弾し、両艦の戦闘力がみるみる落ちていく。

その爆発の光芒と振動の中、轟音響く艦橋内でプラット大佐は必死に損害状況の把
握に努めていた。
「直掩はまだか! あとどれくらいかかる!」
「あと2分で射程に入ります!」
「2分! 2分だと!」
この艦が残骸になるのに十分な時間だ、とはさすがに艦橋内の部下に向かっては言
えなかった。

0089.10.18 1126 アヴァロン艦橋 =============

「第1小隊、オーガスタス大尉機、続いて後方スワイガード少佐機近付きます。」

「各砲座にデータを転送しろ。 味方機を撃つなよ。」

アヴァロンは、ロージヒカイト隊の攻撃を受けつつも、対空砲火や防空用のミサイ

ルで応戦しつつ牽制の主砲を放つ。
「テレジア中佐、第1小隊は本艦隊を航過し、後方カルダモン艦隊へ向かえ。 例
 のギャプランがいる。 損害を局限しろ。」
「了解です。 スワイガードとオーガスタスを先行させています。 私もすぐに戦
 域へ到達できます。」

艦橋のモニターでは、ネモAEWとその護衛機が、アヴァロンの後方で慣れない艦
隊防空に従事している様子が伺える。 しかし3機の編隊を追い払うのがやっとで、
とても撃墜などかなわないようにも見て取れる。 残念ながら機体も、搭乗員の錬
度も、比較にならない差があるのは確かだろう。

「本艦隊は最大戦速、最短時間でガンビア要塞に向かう進路を取れ。」
一連の命令を出し終えたマクファーソンに、マッキーナ中佐が小声で声をかける。
「艦隊司令、MSの戦域に突っ込むのですか?」
「いや、そうなる前に敵主力隊は実質的に制圧できる。 それよりも、この艦隊を
 前に出せば、カルダモンとそれに絡みつく敵機も前の方に引っ張り出せる。 そ
 うすれば少しでも早く、テレジアやホーバームにギャプランの相手をさせる事が
 できる。」
「わかりました。」

0089.10.18 1130 カルダモン艦隊周辺宙域 =========

ハドロンのフライルーは、ヘック大尉率いる直掩MS隊の数を次々に討ち減らして
いく。 自分達も装備する連邦軍標準型のビームライフルについては上手くやれば
2発は耐えられるシールドも、ギャプラン固有のビームライフルには一撃で持って
いかれてしまう。
その振動と衝撃の残る一瞬に次の一弾を受ければ、ネモであろうがジムⅡであろう
が容易に爆散した。
指揮下の第2小隊を全て失ったヘック大尉以下の残存全機は必死の戦いを展開する
が、ハドロンには、低速、低技量、低士気の「撃ち返してくる的」にすら見える。
艦隊から撃ち上がる火箭をかわしながら、直掩隊の1機を戦域離脱に追い込み、4

機目を撃墜した時、ミサイル並みに高速で接近する機体をセンサーが捉えた。
「ちっ! 掃除が終わっていないのにもう来たか。 初手はZモドキか?」

フライルーは、左腕のムーバブルバインダーに装備されたビームライフルをカルダ
モンに向け無造作に連射した。 カルダモンとフライルーの間に陣取った直掩隊の
最後の1機がシールドでそれを受け止める。 ネモの専用シールドは可動部のジョ
イントより上が一撃で吹き飛ばされ、頭部のバイザーがその余波でひび割れる。
次のビームは、そのネモがビームライフルを持ったままの右腕を盾代わりにして防

いだ為に、その右腕を破砕し胴体の装甲を焦がすにとどまった。 3発目は機体胸

部を直撃したが、ダメージコントロールに優れた設計の機体がギリギリで耐えた。

しかし、衝撃で激しく振り回される機体のコクピットに、4発目のビームが直撃し、

機体を貫通した。 爆散するネモを背景に、威力の減退した4発目のビームは、カ

ルダモンの艦橋上部の装甲を一部溶解させたが貫通は成さなかった。 
直掩任務を果たしたヘック大尉の最期だった。

0089.10.18 1130 オーガスタス機コクピット ========

「マズい! 直掩が全滅した! このままギャプランと交戦する!」
「オーガスタス! 時間を稼ぐだけでいい! 私もすぐに追いつく!」
スワイガード少佐の声を耳にしながら、変形したC1の装備するビームライフルを

撃つ。

0089.10.18 1130 スワイガード機コクピット ========

今まで遠巻きに攻撃を繰り返していた別働隊のバウが、スワイガード機に接近して
くる。 C1のメインカメラがその動きを追う。
「なかなかの手品師だな。」
早くオーガスタス機に追いつかないと危険だ。 しかし、艦隊に接近した敵機をも
し振り切ればアヴァロンの危険度が跳ね上がる。 ましてや相手は機動性の高いバ
ウ。 後ろを取られれば自分も危ない。
「仕方ないな。 だがショータイムは短いぞ。」

0089.10.18 1130 ロージヒカイト機コクピット =======

「今アンタを追いつかせる訳にはいかないんでねぇ。」
アヴァロン艦隊からの猛烈な弾幕をものともせず突き切るバウ。
先行した機体をハドロン中佐が墜とすまでのわずかな時間を稼げば、事実上後方の
艦隊は全滅するだろう。 そのわずかな時間を稼ぐのが自分の、おそらく最後の任
務だ。 バウ専用のビームライフルは既に失われ、残っていた一年戦争時のビーム
ライフルを装備している。 当時の連邦軍が開発した、いわゆる「試作型ビームラ
イフル」と呼ばれていた物だ。 バウの出力でドライブすれば、数発でビームライ
フル自体が爆散するかもしれないと、尊敬する程年配の整備兵が言っていた。
リニアシートの後方に映るのは2機のガザC。 トラブルを抱えながらのクローブ
機と、被弾によりわずかな薄煙を引くコンフリー機が必死でバウに続行している。
これ以上は無理だな・・・。
「クローブ、コンフリー、作戦変更。 脱出する艦隊の直掩に付く。 上に抜けて
 戦域を離脱して、2人は先にB7Dへ向って。 私もすぐに追いつくから。」
対空砲火に追われながらも、2機のガザCが戦域上方に機首を向けたのを確認して
から、バウはMS形態に変形し、逆にアヴァロン艦隊へ、正確にはスワイガードの
Zプラスへ接近する。

0089.10.18 1131 アヴァロン艦隊上方宙域 =========

バウの構えたビームライフルは初弾を放った直後に、電気系統がショートしたのか
筐体の各所から瞬間的に青い光を放って沈黙した。
シールドに装備されたビーム機構は以前から修理に手が回らず、3門の内1門だけ
がかろうじて使えるが、出力は定格の6割が限界だった。 ビームライフルをパー
ジした右手で、B7Dに残っていた最後の連邦製ビームサーベルを握る。

シールドのメガ粒子砲を放つが、明らかに非力なビームに見えた。


C1の放った3発のビームの内の1発は、バウの左肩の突起部とその後方に見えて
いる左翼構造物を一撃で破砕した。 相当AMBAC機動に影響が出るだろう。
あと寸秒で白兵戦距離に入る瞬間にC1もビームサーベルを起動した。

真正面から高速で接近する両機がすれ違う瞬間、バウはビームサーベルの一撃を横

殴りに放った。 C1の胴体致命部を狙った捨て身の一撃だった。
相対するC1は、構えたビームサーベルに相手の目を引きつけておきながら、腰部
側面に装備されたビームカノンで、バウのその右手を撃ち抜いた。
空振りした形になったバウ。 両機がすれ違った瞬間、C1のビームサーベルがバ
ウのランドセル部分を狙って振り抜かれた。
できれば機体の誘爆を避けたかったスワイガードが放った一撃は、ランドセルだけ
を狙た太刀筋だったが、バウのランドセルに装着されていた推進剤の増加タンクも
同時に切り裂かれてしまった。 その増加タンクが誘爆を起こした。 
ランドセルだけへの衝撃なら耐えられたであろうバウの機体に、増加タンクの爆発
力が、ランドセルの切断面から直接機体の中に叩きつけられる。

高速ですれ違った両機が離れた瞬間、バウは爆散した。
その破片の一部はアヴァロンの艦体に当たって弾かれた。
「こちらスワイガード。 オーガスタス機の援護に向かう。」
すれ違った速度そのままに、スワイガードのC1は変形して推力を全開にした。

0089.10.18 1135 前方MS戦闘宙域 ============

フライタークの主力隊はほとんど壊滅状態だった。 テレジアのリルZに右脚を斬
り裂かれた上に振り切られた黒いマラサイも、他の2機の中破機と共に戦域離脱す
るのがやっとだった。 18機出撃15機喪失、損耗率は実に8割を超えた。
しかし連邦側の代償も大きく、アルハンブラ少佐率いる臨時混成大隊も、その装備
機の7割が喪失し、少佐自身も撃墜されていた。 わずかに6機残った大隊所属機
も無傷の機体は無く、臨時にホーバームの指揮下に入ったが、ガンビア近傍まで追
撃するのは無理だった。
フライターク隊もまた、味方のB7D脱出が安全に行えるよう、連邦艦隊に打撃を
与え追撃をできなくする為に、ハドロンのフライルーを連邦艦隊の至近距離まで接
近させる陽動作戦を完遂した。

0089.10.18 1135 ガンビア基地内中央司令部 ========

「戻って来たのか、ヨーク大佐。」
司令部の狭い部屋に姿を現したヨーク大佐を見て、ヒューグ少将は驚いた。
たった3人の司令部要員は、既にムサイ級ベルヒタに向かわせたので、もうここに
は自分しかいないと「気楽に」思い込んでいたのに。
あとは、もしも連邦艦隊から降伏勧告があればそこで時間を稼ぎ、ベルヒタの脱出
する時間を稼ぐだけだった。 その後は野と成れ山と成れだ。 たとえ連邦の艦隊

が全滅しても、残った連邦のMS隊が「生き残る為に」進駐してくる。 いくらハ

ドロンが無双であっても、推進剤が無くなればどうしようもない。 
自分はここで戦死するも、捕まって極刑になるも、もはや決定権はない。 
なのに・・・

 

「負傷者の連中が多かったんで、船の酸素に1人分余裕を持たせてやりましたよ。」
「バカな事を。 ファイ6の指揮は誰が取っている?」
「軽傷だったのでレッヒ中尉に任せました。 航法にも長けているので安心です。
 それに何より、ファイ6の船長は一年戦争以来のベテランです。 パイロット上
 がりの私などは操船の邪魔にしかなりませんよ。」
「まったく。 大佐が命令違反とは、部下に示しがつかん。」
「ご心配なく、その命令を耳にしていたのは私だけです。」
にやりとするヨーク大佐に、あきらめた様子のヒューグ少将がため息をつく。
「いきなり、パイロット時代に戻ったようだな。」

 

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0089.10.18 1245 地球 ==================

小さな田舎の空港の端の方で翼を休めているプライベートジェットから、目つきの

鋭い白髪の初老の紳士が、片耳に引っ掛けたインカムに話しかけながらタラップを

降りて来る。

「そうです。 予定通り始まりましたが、苦戦しています。」 
・・・
「しかし、どう転ぼうが最終的なわが軍の勝利は揺るぎません。 あとはどれだけ
 損失を抑えれるかです。」
・・・
「ええ。 始まった以上は、ヤツらの派閥の資金源は断てます。 ブッホの連中が
 喜ぶことでしょうな。」
・・・
「このままブレッチェリーへ向かいます。」 
・・・
「わかりました。 爾後の処理はお任せください。 では失礼します。」

彼の降り立ったイングランド西部にあるカーナヴォン空港は田舎の小さな空港だっ
たが、ハマーンによる対岸のアイルランド・ダブリンへのコロニー落としに際し、
津波で壊滅的な被害を被った。 しかし、ようやく航空機の離発着が可能となり、

近く宇宙機の発着も再開できる予定になっている。
彼が小さな頃から一番良く知っている空港であり、表には出さないが復旧への意志
は強いものがあった。

「ようやくここまで落ち着いてきたか・・・。」

既にアイドリング状態を維持しているVTOLに向かって歩きながら、彼は思い入
れのある空港の復旧の様子に、わずかな満足を覚えていた。

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