F.A.D. Yokohama名物のツーマンライブ、THE SUN ALSO RISES 
「どう考えてもおかしい」組み合わせが定期的に起こる企画だが、今回の組み合わせはキュウソネコカミとFOMAREというZeppでワンマン出来る組み合わせ
当然ながらチケットはソールドアウト
平日の夜にあまりにも狂ったツーマンライブが開催されようとしている

この日は週の半ばの水曜日
移動している際には高校からライブハウスに向かう方もいたが、週のど真ん中だからかだろうか
やたら飲酒している方が多い
日頃のストレスがたまりにたまっているのだろうか

・FOMARE
F.A.D.のツーマンライブは年功序列になることが多く、この日も先攻は若手(と書きつつも、今年で結成10周年)のFOMAREに
とはいえ今年のツアーでもF.A.D.は回っているし、前日にはアマダシンスケ(Vo. & Ba.)がF.A.D. への熱い想いを語ったりと相思相愛の関係のようなもの

定刻から少し過ぎた頃に暗転し、場内には「夢から覚めても」が入場SE代わりに流れていくのだが、それと同時に3人がステージへ
F.A.D.はステージかそんなに高くない
なので時に誰が喋っているかも把握しづらい時があるのだが、

「F.A.D.はFOMAREのホーム!!」

と恐らくギターのカマタが発しただろう言葉が響き、途中から「夢から覚めても」は生演奏に切り替わっていくのだが、アマダが煽ることはなくても大合唱に

照明はFOMARE地元を連想させる緑と粋なはからいを感じたが、アマダが煽らなくても大合唱
自分がライブを見るのは恐らくJAPAN JAM2022以来
一応その前からちょくちょくライブは見ていたけど、ライブハウスで見たことはなかったので、「こんなにデカい合唱を起こすのか…」と驚くばかり
ステージ側からホーム宣言が出るのも納得である

ステージが低すぎるため、低身長ならびに後から来た方はほぼ見れないのがお決まりなF.A.D.故、赤髪のドラマーオグラは最初しか見えなかったが、そのオグラのビートに合わせて跳ねる「SONG」の、

「ほら声に出して 思う事歌えばいい
ほら手を伸ばして欲しいものを掴めばいい
ほら上を向いて 涙は流さないで」

は我慢することなく、歌いたいのであれば歌えばいいと促しているかのよう

この声を出すことがこの日のライブ全体のテーマのようなものになっていたのだが、カマタが甘いメロディーを鳴らす「Lani」は、曲を象徴する

「カーテンの隙 灯る光」

の部分で冒頭から合唱が起こり、アマダはすかさずマイクスタンドを客席へ

自分はコロナ禍前にFOMAREを見た際、「MONGOL800のような立ち位置になりそうなバンド」と考えていた
シンプルなスリーピース、ベースボーカルという共通点からそうした思考にたどり着いたのだが、親しみやすいメロディーに歌いやすい日本語パンク
今や新しいパンクロックの代表である
WANIMAやサバシスターもそうだけど、日本語で合唱出来るのはあまりにも大きい

そんなアマダは、

「横浜は(シン)ガロングが凄い!!」

と早々に客席を称え始めるが、

「地元よりもここでライブしてる(笑)」

と衝撃の告白もするアマダ(笑)

「あなた群馬代表でしょ」と思わずツッコミを入れたくなってしまった直後、

「横浜代表でもいいかも(笑)」

とラウド・パンクシーンを牽引する存在でもあり、神奈川が生んだSiMに並ぼうとするが、

「でもOVER ARM THROWいるから(笑)」

と神奈川のシーンを代表するOVER ARM THROWの名前を上げるアマダ
自分の大学にはOATのロゴTシャツを着用している方がいたし、なんなら先日仕事先でバンドTシャツを着用している人もいた
こうしたローカルトークが出来るくらい、FOMAREはF.A.D.や神奈川に馴染み深い

そんなFOMAREは最近になってコール&レスポンスを始めたようだが、その内容はキュウソやFOMARE、ライブハウスが好きといったものであり、そうしてお互いをリスペクトしたあと、「One Day」をアマダはまるで大御所歌謡ミュージシャンのように歌っていくのだが、事前にアマダが

「キュウソのファンはFOMAREと相性が良いと思う」

と話していた通り、会場の雰囲気はピースフルそのもの
最高な時を今まさしく刻んでいる

「初めて出た頃からやっている曲」

と初めてF.A.D.に出演した頃(2016頃)からやっているらしい「雨の日も風の日も」は自分がCDJで初めてFOMAREを見たときもやっていた
特にコロナ禍前から存在している曲はその曲を聞いたときの景色もフラッシュバックさせるので、懐かしくもなるが、

「気持ちで歌います」

とアマダが告げた「REMEMBER」は、強弱をつけながら歌い、カマタやオグラもギターやドラムに緩急をつけながら演奏している印象
歌唱も演奏も高低差をはっきり
それだけFOMAREはこの「REMEMBER」をしっかり届けたいのだろう

そのうえでアマダは2016年頃には上京していたようだが、曲はほとんど生まれず最寄り駅(の隣駅?)まで歩いたところ、小説のような景色が広がっており、それがある曲の元ネタになったようだが、その話はかなり長くなり、アマダは少し咳き込んでいる場面もあったのだが、印象的だったのは

「何かをするには犠牲がつきもの」

ということ

どんなことをするにも全て犠牲がついてくれる
犠牲なく出来るものは無いのだ

そのうえでアマダは自分の愛するものを大切にするように話しつつ、

「バンドを辞めたいと思ったこともあったけど、続けたい気持ちの方が多かった」

こと、ギターのカマタと何年も同じ時間を費やしていること、F.A.D.が今年で28年目を迎えられたことにリスペクトをしながら「23:12」を演奏する
普段からやっているかは分からないが、F.A.D.との長年の関係を踏まえてやられたものだろう
そう思うと、ちょっと特別な瞬間を目撃できた気がする

そしてカマタの疾走感あるギターに載せてオグラが手数の多いビートを刻む「wave」から、「愛する人」ではキュウソやF.A.D.を歌詞に混ぜながら、

「当たり前だった毎日がただ恋しいだけなんだ」

の大合唱

自分は制限が多かった時にもF.A.D.を訪れたが、あのやりづらさはそう忘れるもこではない
床にマス目が貼られてそこで見るスタイルだったし、発声も出来ない
ライブハウスなのにホールに来たような感覚だったし、発声できないのはあまりに違和感があった
普通に出来たことが出来なくなる
今でこそ良くも悪くもガイドラインが撤廃されたが、合唱できる今は当たり前の日々が恋しかったことを痛感させられる
生で合唱が起こっているのをみたら尚更

そう思っていた矢先、

「このままじゃ追われないよな!!」

とアマダが煽ると、最後の「Frozen」はここまで出てなかったダイバーが続出
それも凄い速度で圧縮が起こって驚いたが、去り際にカマタ(?)は、

「F.A.D.のFOMAREは凄いだろ!」

と力強く宣言
歌心もパンクスピリットも素晴らしかった

セトリ
夢から覚めても
SONG
Lani
One Day
雨の日も風の日も
REMEMBER
23:12
wave
愛する人
Frozen

・キュウソネコカミ
普段からツアーに足を運んできたとはいえ、このライブの前キュウソを見た最小の会場はCLUB CITTA
F.A.Dのキャパはその半分近く
2020年に開催予定だった47都道府県ツアーの神奈川会場だったF.A.D.でようやくキュウソを見れることに
言わずもがな、過去最短距離でのキュウソ

転換が終わり、FEVER333の「BITE BACK」が開演を告げるゴングとして流れシンノスケ(Key. & Vo.)は手拍子を煽る中で、セイヤ(Vo. & Gt.)はやたら客席を見ているのだが、

「西宮から来ました、キュウソネコカミです。」

とセイヤが挨拶した直後、

「住みやすい」

と「Welcome to 西宮」で早くもセイヤが突入
普段なら「BITE BACK」の最後にセイヤ達が思い切りデカい音をぶつけるものの、この日はそれが無くセイヤはハンドマイク
いつもと違う理由はここにある
まるでF.A.D.に来場された方に、セイヤ達が今なお在住している西宮の良さをアピールしているように見えるが、ソゴウ(Dr. やっぱり客席後方からは見えない)が凄まじく早いビートを刻むことから分かるように、これはれっきとしたパンク

セイヤがステージに戻り、シンノスケが挨拶と同時に

「伝説の夜にするぞ‼」

と予告ホームランを行い、セイヤが

「おっしゃあ!かかってこい!!」

と挑発する「ビビった」で、オカザワ(Gt.)やサポートベースのキハラと共にセイヤはお立ち台に上り、ギターを鳴らしていくも今回はフェスでなくツーマン
普段ならフェスでもかなりの人が行っている、クソワロダンスがあまり行われていないのは少し意外な光景だ
同時にこのライブはキュウソ主催のワンマンではない
そのためサークルモッシュどころか、ワンマンでは絶対発生しないダイブまで起こる信じられない景色が(キュウソのワンマンは開演前に、「楽しくても 思いやりとマナーを忘れるな」、「キュウソネコカミのワンマンは、俺(セイヤ)以外ダイブ禁止」のアナウンスがあるのがお約束)
自分はキュウソがゲストで出演するライブはそこまで足を運んだことが無いが、キュウソの根本にはハードコアがある
なのでダイブか起こるのは意外なことではない
ワンマンで禁止しているのは、傷つく人を少しでも防ぐためだから

「FOMAREは最近コール&レスポンス始めたらしいけど、俺達は昔からやっていたよ!」

とFOMAREが最近コール&レスポンスを始めたのに対し、キュウソは昔からやっていたことをシンノスケは説明
その昔からやっていた曲の1つが、シンノスケが弾くシンセリフで歓声が起こる「ファントムヴァイブレーション」であり、歌詞は時代に合わせて微妙に変化したりしているが、どんなに時が経とうとも、

「スマホはもはや俺の臓器」

は大合唱

「ファントム〜」が発表された際、シーンには衝撃が走り、キュウソは一気にブレイクした
「musicるTV」で「サブカル女子」が特集されたのも大きいけど、凄い勢いでシーンの前線に立ったのは今も覚えている
それになんならコール&レスポンスはさらに前からやっていたことも

三密の曲でありライブハウスの歌こと「3 minutes」で、セイヤの煽りからオカザワのライトハンド奏法に合わせるように高速左回りが起こり、獰猛にソゴウがドラムを叩きまくったあと、

「F.A.D. Yokohamaへようこそ〜!!」

と来場者を歓迎するが、キュウソが始まる頃にはF.A.Dはパンパンとなり、自分は1番後ろの方まで追いやられていた
あまりに暑く、周囲からもそうした声が聞こえてきたが、

「普段の生活以上に無理をする。それがライブハウス。みんなで助け合えよ!!」

と無理しつつもお互いに助け合うように呼びかけるセイヤ
流石はどんな時でも思いやりとマナーを大切にするバンドである

先程アマダが自身の年齢を話したからだろうか、

「FOMAREは28だけど、俺達は37‼」

とセイヤ達も年齢を明かすと同時に、「もう40近くなのか…」と歳月を経ながらも若々しさを保っているセイヤ達の尊敬の念を送りたくなるが、その年齢に因むような「ギリ昭和」でシンノスケはショルダーキーを使用し、サビの直前には何度も何度も跳ねさせていくが、

「準新作になる 平成‼」

の「準新作」の元ネタはきっとレンタルショップ
キュウソの音源を初めて借りたTSUTAYAは最寄りから消え、自分の地域でレンタル出来るTSUTAYAは今や極少数
「準新作」という言葉も徐々に使用されなくなりそうな予感がしてくる
キュウソもちょうど世代交代の狭間、自分も老害と言われる年齢に近づきつつあるが、まだまだ新作、つまり若い気持ちであり続けたい
旧作と呼ばれることだけは回避したいから

客席で盆踊りを踊らせる曲こと「KMDT25」は、和のビートを担うソゴウによって例のごとく高速化しているが、いざ盆踊りパートに入ろうとすると、盆踊りではなくただのサークルになりつつあるので、いつものボードをスタッフが持ってくるやいなや、

「これを見ろー!!4人で輪っかを作れ‼」

と正しい盆踊りをセイヤが指南し、正常な盆踊りへ
キハラがライトハンド奏法でベースラインを弾いていることはもっと注目されていいと思うのだが

直後、未だにCMで見かけることあるファストな「家」でダイバーを続出させると、F.A.D.の企画である「THE SUN〜」に招かれるのはSHANKとツーマンして以来だと話すが、

「FOMAREの共にとキュウソの共には違う。でも共に歩んできた。だからお守りになるような曲を」

とセイヤはFOMAREとキュウソの「ともに」はそれぞれ異なることを認めつつ、キュウソなりのお守りソングとして「一喜一憂」を届けるのだが、ここら辺で入口近くからキュウソに向けて心無いヤジが飛んできた
キュウソの客層は老若男女
かつマナーもとても良い分類に入る
だからこうした変な野次は普段あり得ないし、10年前に出会って以降長い時間を過ごしてきた
自分の人生の3分の1は一緒に歩んでいる存在
その大切な存在を傷つけられたようながして、「一喜一憂」に集中出来なくなってしまった

しかしセイヤが、

「お互いの思いをぶつけていく曲!!」

と前置きした「DQNなりたい〜」でモッシュどころヘドバンまで起こし、いざ客席に突入すると、セイヤはどこかにとどまることなくクラウドサーフの要領で客席を1周(笑)
過去1番に謎な客席突入だったが、 

「ここは俺をかっこよくしてくれる。だから好きな箱!!」

とステージに戻った際に話したように、セイヤは自分をかっこよく見せてくれるF.A.Dをより最深部まで見たかった模様
すなわちセイヤなりのF.A.D.愛だったのである
その愛を行動で示したあとは恒例のウォールオブデス
会場が狭いと威力も桁違いで臨場感も凄い

そこからソゴウが「ハッピーポンコツ」のビートを刻み始めると、

「FOMAREとはずっと挨拶するだけの関係でした。2回目までは良いけど、3回目に入ったら「流石にいかん!!」と思ってまして、やっとツーマン出来ました!!」

と裏事情を話したあと、

「FOMAREの曲に元気を貰って今日ここに来た人も多いだろうけど、その声はFOMAREにも勇気を与えてます!」

とアマダ達を代弁するように話すシンノスケ
シンガロングは当たり前ながら存在を把握し、その曲が良いと思って参加してくれるもの
つまり認知されたり、良さをみとめられない限り起こらない現象である
なので自身の曲を歌ってもらえることは相当なエネルギーとなる
当たり前に見える行為が、ミュージシャン側には大きな力になっているのだ

「またツーマンするのでよろしくお願いします‼」

と再びツーマンすることを約束し、「ハッピーポンコツ」で踊らせた後、

「メジャーデビューして今日で10年経過したけど、まだまだ売れたいんじゃあ!!」

と野心を隠さずに話して最後に演奏されたのは、この曲配信された新曲「ネコカミたい」

「ビビった」のセルフオマージュを明言していたので、曲調は「ビビった」そのもの
でもこれは「ビビった」というより、収録されていた「チェンジ ザ ワールド」の10年後
Mステに出たし、キュウソをルーツに挙げるバンドも増えてきた
そうしてシーンに生き残れたことを祝福しつつ、まだまだ楽しませることを約束する曲
特に「ビビった」でクソワロダンスだったパートは、

「さぁみんなで手を振って さぁみんなで踊ろうよ」

に変化

客席からステージに向かって、手を降る光景にはウルっとなったが、感動の光景の余韻が冷めやらぬ中、再びウォールオブデスを敢行
これからもチェンジ ザ ワールドさせてくれると期待させるようなライブになった

F.A.D.サイドの企画なので、アンコールがあるかは不明だったが、セイヤ達が戻ってくれると、

「まだやれるのか!?よし!!」

と興奮気味に話し、

「前向きな言葉がうっとうしい時ね?
どんだけやってもさ、どうにもならなくて」

と全員で歌ってから、

「不安だ不安だ不安なんす」

とお互いの不安を声に出して発散する「私飽きぬ私」へ

ライブが終わった頃には汗ベトベト
首都圏でF.A.D.クラスの会場でキュウソを見れることはそうあることではない
まさしく伝説の夜となった

セトリ
Welcome to 西宮
ビビった
ファントムヴァイブレーション
3 minutes
ギリ昭和
KMDT25

一喜一憂
DQNなりたい、40代で死にたい
ハッピーポンコツ
ネコカミたい
(Encore)
私飽きぬ私


※前回見たキュウソのワンマン↓
※前回見たキュウソのライブ↓
※前回見たFOMAREのライブ↓