昨年の暮れに「炎」が年間レコード大賞を受賞したことで更にお茶の間に認知が進み、今や老若男女に愛される存在となったLiSA

しかし、昨年行われる予定だったアリーナツアーは延期となってまだ振替がいつ行われるかは定かではなく(自分は4公演チケットをキープしている)、加えてアコースティックツアーは中止に

そのアコースティックツアーの代替として行われたのがZepp Hanedaで行われた一夜限りの収録ライブ

このライブレポートは2月22日に行われたアコースティックライブのアーカイブを見て書かれたものである


アーカイブを再生すると画面に今回のライブのタイトルが表示され、既に暗転している様子だが、街の雑踏で収録されたと思われる音声が場内に流れており、そのなかで登場したのはのーまりんこと野間(Key.)

今回のバンドメンバーは普段のにゅーメンズと一部異なっているようだ


続けてLiSAが登場すると最初に歌い始めたのはシドの御恵明希が作曲、マオが作詞を務めた「ASH」

普通のアコースティックライブであれば様々な楽器がアコースティックで用意されるが、LiSAの場合は曲によって楽器を変更する方式

なのでこの「ASH」では野間との弾き語りのような状態であるが、シドの売りと言えば美しいメロディー

鍵盤だけになったとしてもこの曲の雰囲気は全く変わってないし、


「ほらもうすぐ 黒い夜明けが 来るから」


を聞けば、今すぐにでもこの混沌とした世の中が終わりそうな予感がする


ツアーで新曲として聞いたときはこの曲に続けて「oath sign」が演奏されるサプライズもあり、非常に嬉しかったことを覚えているが、あの時響いていたのは


「抱きしめた 夢の欠片が 痛いよ」


と叶えられなかった夢の欠片が刺さっていくことくを匂わせるフレーズ

それが今では、


「信じることにさえ 臆病になった」


と正しい情報が分からず振り回されてしまう現代を揶揄するこちらが響くようになってしまった


4年前はLiSAがこのようにお茶の間に浸透するなんて思ってなかったし、そもそもこんなにライブになるなんて誰も思ってない

「こんな世界」を誰が望んだろう


そんななかでLiSAは早くも泣いている

先日のROOMiC FESTIVALでもLiSAは泣いていたが、あれは尊敬するTOTALFATのライブを間近で見れたから

今回泣いている理由

それはこれがLiSAにとって1年ぶりの有観客ライブであったから(コロナ禍になる前最後のライブはSiMが主催し、THE ORAL CIGARETTESと共演したTHE EYEWALL NiGHT Vol.2)


LiSAはコロナ禍になる前は年中ライブをやりまくっており、ライブハウスだろうがホールだろうがアリーナだろうがライブをしていた

それがコロナによって出来なくなってしまい、対面してライブをするのはこの日が久々


「みんなの拍手をもらって…出て来て歌えるかなと思ってしまいました…」


と吐露してしまうのも目の前のファンから拍手をもらうのがこんなにありがたいものと気づかされたからだろう(SUPER BEAVERの渋谷が配信ライブを「壁当て」、有観客ライブを「投げたものが受け止められて戻ってくる感じ」と例えたのは絶妙)


続く1曲は今やLiSAを象徴する1曲となった「紅蓮華」

ただこの日の「紅蓮華」は鍵盤のみなのでTHE FIRST TAKEのアレンジに近い

故にラウドロックと歌謡曲を混ぜた攻撃的なサウンドからは離れており、力強さよりも美しさが際立つ

そんな美しさが目立つからこそ、


「逸材の花より 挑み続け咲いた一輪が美しい」


と困難な状況下であってもトライし続け成功を成し遂げるこのフレーズがより響くというか


するとこの辺りでお馴染みのいくちゃん(Gt.)、ゆーこ(Ba.)とにゅーメンズのメンバーにテレビ出演する際にはドラムを担当することが多いキングことTHE KEBABSの鈴木浩之が合流すると、


「拍手ってこんなにもエモかったんだ…拍手ってこんなにも暖かかったんだって感じました」


と拍手の暖かさを口に出して伝えるが、


「1年ぶりのライブだけどあまり変わらないね!!」


と語るのは歓声がなくとも手拍子は鳴り響いているから


LiSAのライブは合いの手が多いけれども手拍子も多かった

今は合いの手が出来ない状況ではあるが、手拍子は変わってない

故にLiSAはコロナ禍になる前とライブの雰囲気は変わってないと告げたのだ


「アコースティックライブなので、聞かせる曲沢山持ってまいりました!!」


と言いつつも、LiSAの曲はあなたに協力を求めることが多いと協力してもらうことを願うと、演奏されたのはこれが初お披露目となる小南泰葉が作詞作曲した「BRAND NEW YOU」

これが初となったのは「dawn」のカップリングだったというのが1番の要因であるが、原曲のロックな雰囲気はアコースティックでも変わらない

それはこの曲がバンドでもアコースティックでも似合うオールアラウンダーであると示しているようだ


地響きのような音をいくちゃんがサンプラーから鳴らし、LiSAもグロッケンを奏でるのは「crossing field」のカップリングだった「変わらない青」

原曲がアッパーだったため、音数は相当絞っているけどまさかアコースティックライブでこの曲をやる日が来るとは…


ステージバックの照明は結晶が降っているかのように動いているが、この曲を制作した渡辺翔は「crossing field」の作曲にも関わっている

そんな彼が後にsajou no hanaを結成するとは何が起こるか分からないものである(「Evergreen」は名曲なので是非聞いていただきたい所存)


バンドメンバーが去り、再び野間とLiSAの2人になると野間は物静かな鍵盤を弾いて曲間を繋いでいくだが、「紅蓮華」を手掛けた草野華余子(昔はカヨコ名義だった)による「蜜」でLiSAは鍵盤の上に座ったり、転がったりしながら歌う

こうした行為、自分はあまり好きではないのだがLiSAが行うと不思議と許してしまう(ちなみに過去にWEAVERの杉本は鍵盤の上に立って歌唱したこともある)

並びにロックテイストが強いこの曲は鍵盤のみとなるとプログレテイストになるが強弱をかなりつけるアレンジにしたのは野間の提案だろうか


「シルシ」のサビをアカペラで歌いはじめるアレンジはライブでは定番

しかしこの曲で浮かび上がるのはSAOマザーズロザリオ編の主題歌だったこともあり、ユウキのこと


「いくつ願い叶えてもキミと過ごしたい新しい明日をすぐに 次々にボクは きっとまた願ってしまうから」


なんていつまで生きられるか分からないユウキの気持ちを代弁したものだったし、結末が分かっていてもあのエピソードの最終回で涙を流していた

人間はいつか死ぬ

でも思い出は死ぬことはない


「今日を越えていけなくても キミと生きた今日をボクは忘れない」


はユウキを好きな方ほどグッと来てしまったはずだ


直後の「炎」からはコーラスとしてNonaが登場

LiSAのライブではバックコーラスが参加するのは珍しいがNonaのコーラスは上手すぎて、バンド編成のライブでも参加して良いのでは?と思うレベル

ステージ後方では各々が命を燃やしているかのように、赤く染まった照明が浮かんでは沈んでいっているが、次のアルバムでこの曲の立ち位置はやはりラストになるのだろうか


バンドが再び戻ってくると音源では洋楽テイストが強かった「Unlasting」をバンドテイストに再構成するとこの編成で最新シングルの「dawn」

アコースティック編成ということもあってニューウェーブ要素は薄まっているけど、メロディーの良さは健在だし、こういう新しいLiSAを聞いていると、


「まだ終われないな」


と心の底から思う


最後のサビの前ではわざと曲を止めたが、それは客席にいるお客さんの顔をしっかり目に焼き付けるためとも言える


最後の


「いつか終わるその日まで新しい眩しい幕開けを迎えに行こうか」


を終えると、LiSAは


「迎えに…きたね!」


と変貌した世界の中でまた再会できたことを喜ぶように告げるが、実はこのライブのコンセプトはコロナ禍になる前から変わってなく、「unlasting」をリリースした頃からあったとのこと


「暗いところから明るくなるところをイメージ」


とLiSAが話したように暗闇から明るくなっていくようにライブの構想を考えたとのこと

流石に「dawn」は昨年、予定通りツアーをやっていたなら入ってなかっただろうが、「ASH」から始まるというのは変わってないと思われる


「会いたい人に会えたという希望を込めてポップなメドレーを!!」


というLiSAの合図からメドレーに突入すると「crossing field」のカップリングである「KiSS me PARADOX」、「だってあたしのヒーロー。」のカップリング「Sweet Friendship」とレア曲を連発

お馴染み「オレンジサイダー」でLiSAはハーモニカを吹くと、久々すぎる「妄想コントローラー」から「say my nameの片思い」の振り付けをショートバージョンでもしっかり行ったが、最後に


「ウルトラソウル!」


と叫んだのは何故だろう(笑)


メドレーは終わらず横アリでの幸せすぎるダンサーの光景が浮かぶ「1/f」にゴスペル歌唱から始まった「リングアベル」と続いて懐かしの「LOVER"S"MiLE」で終えると、各々のメンバーソロを挟んで、LiSAがバスドラを叩きまくって観客と交流していくとそのセッションは最終的に「Merry Go Round」へ着地

アコースティックアレンジになったことで清涼感ある青春っぽい作風になっているのが最大の変化だが、LiSAは時折「良くできました!!」と流れるサンプラーを叩きまくり(笑)

これは今後のライブでも使われるかも


そして、


「どうしても落ち込んだり泣いちゃったなら 隠さずに僕に手紙を書いて すぐ読んで会いに行くよ この歌を約束にしよう」


と再会を誓う「やくそくのうた」を経て、


「今日が開催できるか分かりませんでした。でもここに来てくれた、信じてここにいるみんなが叶えてくれた今日です」


とLiSAは感謝を述べた


このライブが収録された2月22日は緊急事態宣言の真っ最中

その間に延期になってしまったり、中止になってしまったライブもある中でこのライブは開催できた

それはLiSAを支えてくれたファンのお陰である

このライブがなければLiSA久々の有観客ライブは更に伸びてしまっていた

こうして出来るだけでもありがたいのだ


「出来ることは一歩一歩かもしれない。だけどこの先には最高の未来が待っていると私は信じてます。そんな未来に進んでくれた新しい一歩です」


とこのライブの先には最高の未来が待っていることを届けて、ファンに希望を与えると、最後はよりアイリッシュになった「ハウル」で、


「叶えるまで 吠えてやれ 泣けるまでもっと吠えてやれ」


と前進する思考を示して終了


衣装チェンジした上ですぐに戻ってくると、


「2020をお祝いするはずだったんだけど、私自身もライブができなかったり「紅蓮華」が多くの方に愛していただけたりとか自分が思いがけないことがあった1年でした。」


と昨年はLiSAにとっても予想のつかないことが起こりまくった1年であったことを改めて振り返り、


「2019年の終わりに紅白があったりだとか、私にとっては信じられないことが起きていたんですけど、去年は信じられない色んなことが良いことも悪いこともあったなと思います。みんなにとっても出来ないこと沢山あっただろうし、色んなことを考えた1年だったんじゃないかなと思います」


と話したように昨年2020年がいかに異例な年だったか改めて分かる


昨年を後々どういう年と位置付けるかはこれからの各々の行動にかかっているが


その一方、今年でLiSAはデビュー10周年を迎えることを報告すると、


「色んなことに出会いながら、色んなことに泣かされたり喜んだり色んな思いをしました。それはその時々に居てくれたみんなからのサプライズのような希望の光のようなそんな1つ1つだったなと思います。」


とこれまでの日々はファンが支えてくれたからあるものだと話して、


「みんなにこれからもサプライズや希望を届けていけるように」


と届けられたのは新曲の「サプライズ」

新曲を演奏するなんてまさにサプライズであるが、新たな名曲としてこの曲は多くの人々の心に刻まれることになるだろう

5月にリリースされるミニアルバムに収録されることになっているがその時に歌詞やメロディーをじっくり聞こうと思う


そして最後に届けられたのはLiSAの原点とも言える「best day, best way」

実はこのアンコール、アコースティック編成ではなくバンド編成となっていた(PABLOがいないのでギターは1人)

なのでアンサンブルは普段とあまり変わりなく、このライブはLiSAにとってもファンにとっても大きなエネルギーとなり、


「立ち上がった心 もう負けないから」


という状態になる


その上でキラキラした照明が降りてくるような演出が行われ、


「走り出した心 もう止まれないんだよ」


とこれからもLiSAは止まらないで進むことを誓って終了


この日サポートしてくれたメンバーことを新たにわんたんメンズと、この状況下でもライブできたことから、


「やれること沢山あるなと思った」


と今後の活動に含みを持たせ、


「今まで沢山ライブやって来て、誰かが作ってきた歴史の上でライブをやらせてもらったんだと思っていますだから今度は新しいライブの遊び方を作ろう!!」


とこれまでは偉大なる先輩ミュージシャンが造ってきた歴史の上でライブをやってきたからこそ、新しいライブを作ることを宣言


「日々楽しいことを見つけて寝てください(笑)そうやって楽しいことを見つけてまた会いましょう」


と再会を約束し、最後は「ばいちー!!」を手拍子で鳴らして帰っていった


このライブは本来ツアーとして行われるはずだったので配信で見れるようになったのは素直に喜んでいいのか分からない

しかし夜が明けるようにだんだん明るくなっていくこのライブ構成は非常にユニークで面白いものだった

しかもメンバーを曲ごとに入れ換えるスタンス

他のアーティストとのアコースティックライブの違いが鮮明に出ていた


そんなLiSAは今年10周年イヤーに突入する

既にミニアルバムのリリースも発表されているが、恐らくツアーも控えていることだろう

アリーナツアーがどうなるか、気になるところであれば可能であればやっぱりLiSAを現地で見たい


まだまだ余談を許せない状況ではあるが、LiSAのライブを見るまではまだ終われないよな


セトリ

ASH

紅蓮華

BRAND NEW YOU

変わらない青

シルシ

unlasting

dawn

メドレー(~KiSS me PARADOX~Sweet Friendship~オレンジサイダー~妄想コントローラー~say my nameの片思い~1/f~リングアベル~LOVER"S"MiLE)

Rally Go Round

やくそくのうた

ハウル

(Encore)

サプライズ

best day, best way





最後は「今日も良い日だ」を手拍子で



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