エムポックス(サル痘)の脅威が迫っています
エムポックス(サル痘)とは、天然痘に非常に近縁、
かつ症状も似た、ウイルス感染症です
エムポックス(サル痘),天然痘,牛痘,ワクチニア(ワクシニア,馬痘),ネズミ痘,ラクダ痘,アラスカポックスウイルス等のウイルスは、
同じくポックスウイルス科オルソポックス属に属するもの
そして2本鎖DNAウイルスという、
RNAウイルスより、変異速度が遅いウイルスです
しかしそのエムポックス(サル痘)ウイルスに、
かなり恐ろしい変異株が出てきました
致死率10%、しかも感染力が高いのです
オルソポックス属のウイルスは、それぞれ、特定の哺乳類に感染力を持ち、ヒトにも感染します
ただ、ヒトでは多くは軽い症状で、
死亡例の報告は、エムポックス(サル痘),天然痘の他は、
ほぼアラスカポックスウイルスのみです
そして抗ウイルス剤は、現在は研究中ですが、
予防薬として、共に、
ワクチニアウイルスワクチン接種が、
有効という共通性があります
ここでワクチニアウイルスという名ですが、
ワクチニア=牛(痘)の、という、
ワクチンと同語源の語です
1796年に「免疫学の父」エドワード•ジェンナーが、
牛痘罹患のウシの膿の接種実験を経て、
天然痘ワクチンとして、種痘を始めました
しかし後に、ウイルスは牛痘のものでなく、
ウシが罹った馬痘ウイルス(おそらく変異株)と分り、
ワクチンに用いたという意味で、
ワクチニアと名付けられました
次にサル痘という名について述べますと、
最初はサルから感染した例が出たためです
しかし、リス等ネズミ(齧歯)目やウサギ(兎形)目の方が、
感染源として多いので、間違いとして呼替えられました
でも、感染する哺乳類について考えると、
単系統グループで顕著です
21C初頭から、遺伝子解析により、新しく、真主齧上目というグループが、
提唱されるようになりました
属するのは、ネズミ目ウサギ目の他、
ヒヨケザル(皮翼)目,ツパイ(登木)目,サル(霊長)目です
そしてその単系統グループ内で、
エムポックス(サル痘)ウイルス感染が、
見られると分りました
その意味で、オルソポックス属ウイルスの中でも、比較的、
系統分類的にはっきりとしたグループ内感染を、
行なっていると予想され、
遺伝的特性との関わりが示唆されます
そこから考えると、
特に遺伝的にヒトと近い、サル類からの感染は、
さらに注意を要するかもしれません
私の私見として、サル痘という名称は、
残した方が良いと思うのです
そのエムポックス(サル痘)で今回、
致死性高い(10%)、クレード1(コンゴ系統群)から、
最近派生した、
感染力が強い、変異株クレード1bの感染が、
アフリカ中央部を中心に広がり、
WHOが非常事態宣言を出しました
その翌日、空港検疫の態勢が整っているはずのスウェーデンで、
アフリカ外で初めて1b株感染者が出たことで、
かなり深刻な段階に入ったと考えるべきでしょう
目下、抗ウイルス剤は研究段階の報告も聞きません
今最も有効なのは、天然痘と同じく効果のある、
ワクチニアウイルスワクチンの種痘で、
発症を85%抑えられるそうです
ただ、種痘による抗体が一生続くか否かは、
報道やネット検索ではまだ不明です
今研究中の天然痘抗ウイルス剤の試験も待たれます
とは言え、日本では1976年まで種痘が行なわれたので、
少なくとも 1974年6月生まれまでは、
重症化を多少なりとも抑える免疫力があるはず
逆に40代以下の人が心配です
感染を疑う主な症状としては、発熱と、
その後5日程度の間に水疱,嚢胞が生じることです
昨年、日本で、渡航歴のない人が発症,死亡しました
感染したのは、致死率1%と低く、感染力も弱い、
クレード2(西アフリカ系統群)でした
その後、感染拡大は見られませんでしたが、
より強い、変異株の国内侵入は、時間の問題かと
なお、エムポックス(サル痘)ウイルスは、
飛沫•接触感染を行なう、
有エンベロープ(脂質外套膜)ウイルスのため、
アルコール除菌をはじめとする、
新型コロナウイルスと同じ予防策が、
今のところ、最も有効と思われます(2024.8)