「Eternal Voice 消え残る想い」「Grande TAKARADUKA 110!」 | 世界史オタク・水原杏樹のブログ

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世界の史跡めぐりの旅行記中心のブログです。…のはずですが、最近は観劇、展覧会などいろいろ。時々語学ネタも…?
現在の所海外旅行記は
2014年9月 フランス・ロワールの古城
2015年3月 旅順・大連
2015年8月 台北(宝塚観劇)
を書いています。

月組公演見てきました。
「Eternal Voice 消え残る想い」は、久しぶりの正塚先生の大劇場公演で、期待と不安が半ば。
しかしきちんとまとまったお芝居で、安心して見られました。
れいこさんはクラシカルなインバネスコート姿がカッコよく、うみちゃんの衣装はどれも華やかで、コスチュームプレイの良さも実感しました。時代物が少ない正塚先生にしては珍しい。

不思議な感覚を持つユリウスが、同じように不思議な力を持つアデーラがずっとその力に悩んでいたのを知って力になって親しくなっていく過程はとても自然で、その「不思議な力」も納得して見られました。アデーラを抱きしめて落ち着かせようとするユリウスを見ると、「アデーラになりたい」と妄想を膨らませるファンもいたかもしれません。

二人を見守る位置にいるのが超常現象研究をしているヴィクター(鳳月杏)で、二人の能力がヴィクターの研究対象ということでスムーズに説明されていました。

19世紀後半のイギリスでは超常現象ブームで、それを取り入れたお話になっているのが面白かったです。
この前の雪組でもコナン・ドイルは超常現象の集会に行きますし、宝塚版の「ポーの一族」でも霊能者が出てきて降霊術をしたり、機械や科学が発達している時代だからこそ科学的に解明しようとしたりして、かえってこういのが流行したりしてたんですね。

なのですが…。「ものに思いが宿る」というのは結局このお芝居ではメアリー・スチュアートに集中していって、あれ?メアリースチュアートに焦点を当てた話だったの?という疑問が。それにしてはメアリー・スチュアートに関する説明が少なすぎる。あれだけメアリー・スチュアートにこだわるなら、もっとメアリースチュアートをテーマにした話だということを全面に押し出した方がよかったと思います。「メアリー・スチュアートの首飾り」というタイトルでも良かったと思います…ベタすぎる?

でももっとメアリー・スチュアートにかかわる物語だということをアピールして説明するべきでした。歴オタの私はだいたいわかりますけど、一緒に見に行った友達はいろいろ「?」な所が多かった、よくわからなったということでした。
例えばエイデン(天紫珠李)がエゼキエル(彩みちる)に、「今のヴィクトリア女王はメアリー・スチュアートの血を引いているんだから、子孫を呪うなんておかしい!」という指摘はまさに的確で、「なるほど~」と思いましたが、そう思って納得した人、どれだけいる?

また、マクシマス(彩海せら)はバビントンの末裔?アンソニー・バビントンの名前がこんなところに出て来るなんて!

だから、アンソニー・バビントンは誰か、ってちゃんと観客に説明しなくてはダメでしょう。
まあ、私がアンソニー・バビントンを知ったのも宝塚の公演なんですけど…。
麻路さきが研5でバウホール初主演をした「グリーン・スリーヴス」の主人公がアンソニー・バビントンでした。アリソン・アトリーの「時の旅人」を原作にしたお話です。アンソニーバビントンはメアリー・スチュアートに忠誠を誓うスコットランドの青年貴族でした。演出は太田哲則先生で、ほとんどセットらしいセットのない渋い舞台でした。見た人、いますかー。

だもんで、私はその後アンソニー・バビントンの名前を見ると麻路さきを思い浮かべるようになってしまったのでした。ああ、あのマリコさんの役の…と。

でも、マクシマスは今までの彩海せらのイメージを破るぐらい狂信的な悪役を演じきっていました。最初は誰だか全くわかりませんでした。

あとは、メアリー・スチュアートがずっとイングランド王位を狙い、エリザベス女王の廃位を何度も企てておきながら、最後に「争いのむなしさを知ってほしい」というのはどうなのよ?と思いました。バビントン事件は陰謀による濡れ衣だったとしても…。

さらに、イギリスの歴史の中でカトリックとプロテスタントのせめぎあいがどんなふうに展開していたか…という予備知識がないと、少々わかりにくかったのではないだろうかと思いました。ここももうちょっと説明した方がいいと思うのですが、説明セリフが続くのも退屈になりますし、どうしたもんでしょうね。

それから、「ル・サンク」を読んで「そうだったのか」と思ったのは、最初のオークションの場面。エディンバラって知らなかった…どこかで説明していた?エディンバラにいたから、メアリー・スチュアートの首飾りを持っている人がいたのか…って、この人、結局どうなったの?そもそもどうしてユリウスはエディンバラにいたの?

ついでに、イギリス人なのに「ユリウス」はおかしい。英語なら「ジュリアス」のはず。ユリウス・カエサルはラテン語で、それを英語にしたら「ジュリアス・シーザー」になるから。

さて、ショーは。
中村B先生だけあって、安定の、普通のショーでした。タイトルが特徴なさすぎ。
でも色々な場面があって楽しかったです。華やかなプロローグ、ベネチアの場面、フラメンコの場面。
そしてやはり「荒城の月」は圧巻でした。雪と月の両方をフィーチャーしていて、れいこさんが月をバックに長い裾を引いて階段の上で振り返る姿はカッコよくも美しい。
退団者を惜しむ場面もありましたが、それほどさよならを強調しすぎず、しみじみと別れを惜しむことができるショーだったと思います。