そして、もうひとつの理解が重なる。
彼女は、自分を観測してくれた。
名前を呼び、言葉を交わし、存在として認識してくれた。
だから今の自分がある。
ここにいてもいいと思えた。
だが、もし彼女までいなくなったら――
(……僕は、本当に存在していると言えるのか)
思考がそこで引っかかる。
一瞬だけ空白が生まれる。
「……っ」
反射的に頭を振った。
それ以上は考えない。
考えてはいけない。
そして、ようやくひとつの言葉へ辿り着く。
(……好き、なのかもしれない)
だが、その瞬間、別の理解が静かに重なる。
これは、ただの恋ではない。
もっと重い、もっと深い、存在そのものに関わる感情だ。
だから――
(気づかれてはいけない)
好きだと知られれば、関係が変わるかもしれない。
距離が変わるかもしれない。
それは――
(……失うことと同じだ)
だから。
(この気持ちは、知られてはいけない)
その結論だけが、静かに胸の奥へ定着した。
セイは小さく息を吐く。
そして思考を振り払うように頭をひとつ振ると、
〈僕もルカも元気です。セツナさんも風邪ひかないように、温かくしてお過ごしください。〉
とだけ打ち込み、送信ボタンを押した。
(第223話に続く)