乱れた呼吸を、なんとか悟られないように整える。
そんなセイの様子など知らぬげに、ルカが小首をかしげた。
「セイくん?」
ルカの声で、ようやく意識が戻る。
「……なんでもないよ」
即答。
だが、声が少し硬い。
頬の熱は、隠せていない。
「ふーん?」
ルカはそれ以上追及せず、視線を外した。
「……」
セイはゆっくりと息を吐く。
胸の奥を、確かめるように。
(……そうか、これは……)
まだ、うまく整理はできない。
ただ、ひとつだけ、はっきりしていることがあった。
この場所で、ずっと1人だった時間の中に、当たり前のように入り込んできた存在。
そして今、その存在を失うことを想像しただけで、胸が痛む。
「……これは、問題だな……」
そう呟きながらも、その感情を、手放そうとは少しも思えなかった。
むしろ、失いたくないと、どこかで、強く思っている自分がいた。
初めて知ったこの感情に戸惑いながらも、胸の奥では、小さく、確かに、鼓動が続いていた。
(第207話に続く)