■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第205話) | 世羅の気功と日常ブログ

世羅の気功と日常ブログ

「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
テーマに、気ままに想いのままに
書き綴るブログです。

何を否定しようとしているのかすら、もう分からない。

 

 閉じた瞼の裏側に、嫌でも彼女の姿が焼き付いて離れない。

 

脳裏に浮かぶのは、また彼女だった。

 

笑った顔。


やわらかな声。


隣を歩いた時間。


何気なく触れた指先のぬくもり。

 

……っ」

 

思わず、口元に手を当てる。

 

……全部、セツナさんだ)

 

呼吸がうまく整わない。

 

何度否定しようとしても、浮かぶ顔は変わらない。

 

暖炉の前。

 

街のイルミネーション。

 

メッセージの通知音。

 

思い返すたび、そこに彼女がいる。

 

……違う)

 

そう思った。

 

だが、何が違うのか分からない。

 

(僕は――)

 

そこで思考が止まる。

 

いや。

 

止まったのではない。

 

もう、逃げ場がなくなったのだ。

 

曖昧だったものに、名前が与えられてしまった。

 

観測してしまった。

 

確定してしまった。

 

波のように揺れていた感情が、ひとつの形を持つ。

 

鮮明に。

 

どうしようもなく。

 

――僕は、セツナさんが――)

 

その先を、口にすることはできなかった。

 

だが、もう分かっている。

 

名前を思い浮かべるだけで、胸が締めつけられる。


会いたいと思う。


声が聞きたいと思う。


また、この時間を一緒に過ごしたいと思う。

 

それが何なのか、もう知らないふりはできなかった。

 

(第206話に続く)