ルカが食事を始めたのを確認すると、セイも自分の朝食へ手を伸ばした。
湯気が静かに立ちのぼっている。
箸を動かしながら、ふと向かいの椅子へ視線が流れた。
当然、誰もいない。
それなのに、一瞬だけそこに誰かが座っているような気がして、胸の奥がかすかに温かくなる。
セイは小さく首を振り、その考えを追い払うように食事を続けた。
食べ終える頃には、ルカは満足そうに器の前で丸くなっていた。
その姿に、ふっと口元がゆるむ。
自分が柔らかな表情をしていることに気づいたが、不思議と悪い気はしなかった。
洗い物を済ませ、布巾でテーブルを拭く。
布が木肌をなぞる音だけが、静かに部屋へ残る。
ひと通り片づけを終えたあと、軽く息をついた。
(第184話に続く)