■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第182話) | 世羅の気功と日常ブログ

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「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
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セイはキッチンに立つと、いつもと同じように野菜を洗い、包丁を握る。


規則正しく刻む音が、静かな室内に響く。

 

その手が、ふと止まった。

 

なぜだろう。


その静けさが、部屋の温度を少しだけ下げたような気がした。

 

だが気のせいだと意識を切り替え、再び包丁を動かす。

 

火を入れる音。


立ちのぼる湯気。


油の弾ける小さな音。

 

それらが自然と意識を今へ引き戻してくれる。

 

ルカの分の野菜を切り分けていると、不意にセツナがルカの食事を用意していた姿が脳裏をよぎった。

 

けれど、その思考を深追いすることなく、手際よく鍋をかき混ぜる。

 

野菜が跳ね、やわらかな香りが広がった。

 

その匂いに、わずかに安堵している自分に気づく。

 

足元で、ルカが小さく鼻を鳴らした。

 

視線を落とすと、まだ少し眠たげな目でこちらを見上げている。

 

「もうすぐだよ」

 

そう声をかけると、ルカはぴくりと耳を揺らした。

 

その存在だけで、不思議と静けさがやわらぐ。

 

セイはルカの器を床に置いた。


ルカは迷いなく駆け寄り、顔をうずめる。

 

(第183話に続く)