朝、目が覚める。
いつも通り顔を洗い、簡単に着替えて庭へ出る。
『幸せの種』を確認するが、まだ変化はない。
そっと土に触れる。
冷たくも柔らかくもない、ただそこにある感触だけが指先に伝わった。
続いてプチトマトの芽へ視線を移す。
昨日より、ほんの少しだけ伸びているように見える。
じょうろで静かに水を与えながら、ふと隣の部屋へ目が向いた。
昨日までそこにあった温かさ――誰かがいる気配は、もうない。
空気が静かに揺れ、部屋はただの静かな箱へと戻っていた。
胸の奥に、小さな空白がひらく。
だがすぐに意識を手元へ戻す。
(……朝食の準備をしなくては)
自分の思考にはっとして、セイはキッチンへ向かった。
(第182話に続く)