そのとき、トコトコと、床を伝ってくる、柔らかな足音がした。
セイは目を開け、暗がりの中で視線を落とす。
「……ルカ?」
白い影が、ベッドのそばまで来ていた。
ルカは1度だけセイを見上げると、そのまま床の上で、くるりと丸くなる。
――丸々。
その小さな背中を見た瞬間、セイの胸が、きゅっと縮んだ。
(……そこは、冷えるだろ)
セイは静かに身を起こし、そっとルカを抱き上げる。
「ルカ……今日は、一緒に寝ようか」
布団をめくり、その中に、そっと迎え入れる。
ルカは一瞬だけ身を固くしたあと、すぐに力を抜いて、丸くなった。
「……あったかい」
小さな声。
セイは布団を整え、ルカを包むように、そっと体勢を落ち着かせる。
――セツナさんはいない。
その事実が、静かに、胸の奥に落ちてくる。
ぽっかりと、冷たい。
昼間の温度を知ってしまった分、その空白は、はっきりと感じられた。
けれど。
腕の中には、確かな重みと、確かなぬくもりがあった。
小さな体温。
規則正しい呼吸。
それが、冷え切るはずだった空白を、完全には許さない。
「……ルカ、ありがとう」
囁くようにそう言うと、ルカは小さく鼻を鳴らした。
セイは目を閉じる。
寂しさは、確かにそこにある。
消えたわけじゃない。
それでも今夜は、冷たい夜に、ひとりで沈まなくていい。
胸の奥に残る、微かなあたたかさを確かめながら、セイは静かに眠りへと落ちていった。
(第181話に続く)