夜。
家の中は、音という音が消えていた。
風の音も、機械の作動音もない。
ただ、空気そのものが静まり返っている。
セツナを見送ったあと、セイは簡単に自分とルカの食事を用意し、特別な会話もないまま、それを済ませた。
片付けを終え、灯りを落とし、ベッドに横になる。
――しん。
その瞬間、はっきりと分かる。
昼間まで、この家にあったものが、ごっそり抜け落ちている。
人の気配。
声の余韻。
あたたかさ。
冬の夜の空気が、何の抵抗もなく、部屋の隅々まで行き渡っていた。
(……静かだ)
寒さというより、“人がいない空気”の冷たさ。
それが、胸の奥まで染み込んでくる。
目を閉じても、心の中にぽっかりとした空白が残ったままだった。
(第180話に続く)