セツナの言葉を聞き、セイの胸は重くなった。
けれど、その感覚を意識の外へ無理やり押しやるようにして、言葉をしぼりだす。
「……大丈夫です」
そして少し間を置いて、セツナを安心させるように言葉を付け足す。
「…ルカも一緒ですから…」
セツナは、どこか安心したように笑顔を見せる。
「そっか。それなら安心だね」
「…はい…」
少し間が開いた後、セツナが言葉を切り出す。
「…じゃあ、今度こそ本当に帰るね」
「はい。今日は……ありがとうございました」
「こちらこそ」
玄関先で、軽く手を振る。
ドアが閉まる直前、もう1度だけ、セツナが振り返った。
「またね、セイ」
「……はい。また」
ドアが閉まる音がして、家の中が、急に静かになる。
ルカが、きょろきょろと辺りを見回してから、セイの足元にすり寄ってきた。
「セツナちゃん、かえっちゃったね」
「……そうだね」
セイは、ルカの頭を撫でながら、その場にしばらく立ち尽くしていた。
胸の奥に残るのは、ぽっかりとした空白と、その奥に滲む、あたたかい余韻。
寂しい、という言葉にするには、まだ早い。
でも、確かにそこに、何かが残っていた。
(21日間……)
ふと浮かんだその数字を、セイは静かに飲み込む。
けれど、その重さだけは、胸の奥に残り続けていた。
(第179話に続く)