最初は、気のせいだと思った。
寒さのせいか、歩き疲れたからか。
そう自分に言い聞かせるように、セイは小さく息を整えようとする。
けれど次の瞬間、心臓が一拍、強く打った。
ドクン、と。
「……」
呼吸が、一瞬だけ浅くなる。
足元が、ほんのわずかに揺れた気がした。
(今の……?)
視界が暗くなるほどではない。
立っていられないほどでもない。
ただ、身体の内側で何かがずれているような、説明のつかない違和感。
セイは無意識のうちに、足を止めていた。
「セイ?」
すぐ隣から、セツナの声がする。
「……あ、いえ」
反射的にそう答えたものの、声が少しだけ掠れていた。
自分でもそれに気づいて、セイは軽く喉を鳴らす。
その様子を見たセツナが、ふと表情を曇らせた。
「……セイ、本当に大丈夫?」
セツナが心配そうにセイの顔を見る。
(第165話に続く)