頂上に着き、スキーを履きながらセツナが少し身を乗り出して言う。
「わぁ……雪の上、すごくきれいだね」
「はい、静かで、特別な時間が流れています」
セイは静かに微笑む。
滑り始めると、風が顔に当たり、雪の匂いと冷たさが心地よく感じられる。
スキー板の感触が雪面を通じて伝わり、2人は自然に同じペースで滑った。
途中で少し止まり、景色を眺めながら呼吸を整える。
ゴール付近の休憩所で、2人は温かい飲み物を手に取り、ゆっくりと手を温める。
「滑るだけじゃなくて、こうして景色を楽しめるのもいいね」
「はい、少し立ち止まると、雪の静けさがより感じられます」
セツナは笑顔でココアを口に運び、セイも同じくマグを手に取り、温かさにほっとする。
休憩所の窓から外を見ると、ライトアップされたゲレンデに雪がきらきらと反射している。
2人は互いに目を合わせ、短く笑った。
小さな会話と笑い声が、雪の夜にそっと溶けていく――
急ぐ必要のない、特別な時間が、ゆっくりと流れていった。
(第148話に続く)