食後、静かになった部屋の中でセイは視線を巡らせ、ふと、部屋の隅に置いていた布と綿に目を止めた。
昨日は手を付けられなかったものだ。
「……クッション、作るか」
針と糸を取り出す。
使うのは久しぶりで、糸を通すだけでも少し手間取った。
布を合わせて、縫い始める。
思ったより針先が定まらず、縫い目が揃わない。
1度止めて、ほどいて、やり直す。
指先に軽い痛みが走り、思わず手を止める。
深く刺したわけではない。
それでも、慣れていない作業だということは嫌でもわかった。
「セイくん、だいじょうぶ?」
「うん。ちょっと、やり直してるだけ」
布を縫い終え、中に綿を詰める。
均等に入れたつもりでも、どこかに偏りが出る。
形は少しいびつだが、触るとちゃんと柔らかい。
最後に口を閉じて、手を止めた。
「……こんなもんかな」
床に置くと、ルカがすぐに近づいてきて、その上に乗った。
くるりと1回転して、丸くなる。
「ふかふかだよ!」
「……それなら、よかった」
セイはほっと溜息を付き、一休みすることにした。
(第111話に続く)