キッチンへ移動すると、そこにはセイが事前に準備していた食材が、整然と並べられていた。
小麦粉、砂糖、バター、卵。
すべて計量済みで、道具も揃っていた。
「では、最初にバターを柔らかくしましょう」
「うん、了解」
セイはボウルにバターを入れ、木べらで丁寧に練り始めた。
「セツナさん、よろしければ……」
「もちろん。じゃあ砂糖を入れるね」
自然と役割が分かれ、2人の動きにリズムが生まれる。
「セイ、もう少し混ぜてもいいかも」
「はい。このくらいでしょうか……」
生地を整え、オーブンへ入れる。
「焼き上がりまで、少し時間がありますね」
「そうだね。待ってる間、片付けしようか」
洗い物をしながら、セイはふと微笑んだ。
「こうして作業をしていると、時間の流れが、穏やかに感じられます」
「わかる。私も、セイと一緒だと落ち着くな」
やがて、甘い香りがキッチンに広がった。
焼き上がったクッキーをテーブルに並べ、お茶を用意して向かい合って座る。
「それでは……いただきます」
一口かじると、やさしい甘さが広がった。
「美味しい。セイ、上手だね」
「ありがとうございます。セツナさんとご一緒できたからだと思います」
穏やかな会話と作業の時間は、自然と2人の距離を縮めていった。
(第96話に続く)