「……僕が、あなたが来られない間にやりたいことは……」
1度、息を整える。
「ここを、“あなたがいつでも帰ってこられる場所”として整えておくことです」
セツナは、じっとセイを見つめた。
「あなたが忙しくても、ここに来たとき、すぐに落ち着けるように……“ここに戻ってきたんだな”と、思えるように……あなたを待つ時間を、ただ数えるのではなく、“次に会う日のための準備”にしたいんです」
視線を逸らさず、穏やかにセイは告げた。
「あなたが安心できる場所を守ることが、僕にとっては、いちばんの喜びですから……」
少しの間、沈黙が流れた。
やがて、セツナが静かに口を開く。
「……それ、すごく嬉しい」
でも、と彼女は続けた。
「でもね、セイ。それ、“私のため”だけになってない?」
「……え?」
「セイ自身のための時間。それ、どこにあるの?」
セイは言葉を失った。
セツナは穏やかに、諭すように続ける。
「私はね。セイには、自分の意思で、自分のために時間を使ってほしいの」
「……では、僕は……何をしたらいいのでしょうか……」
セツナは少し考え込み、ぱっと顔を上げた。
(第91話に続く)