その後2人は、テーブルのそばに腰を下ろした。
「ところでセイってさ。今まで、何かやりたいことってなかったの?」
セイは少し考え、ゆっくりと答える。
「正直に言えば……あまりありませんでした。昔から、強く何かを望むことがなくて……ですから急に何かを始めようとしても、うまく気持ちが動かなくて……」
それでも、とセイは続ける。
「でも……あなたが一緒に考えてくれるなら、そんな僕でも、“意味のある時間”を作れる気がします」
それを聞いてセツナはやさしく微笑んだ。
「じゃあさ。体を動かすのはどう?筋トレとか、軽い運動とか」
「確かに、それは良いかもしれませんね。室内でもできますし、基礎体力の維持にもなります」
「でもさ」
そう言ってセツナは首をかしげる。
「それって日課にはなるけど、寂しい時間を埋める感じとは、ちょっと違うよね」
「……そうですね……」
少し考えてから、セイは提案した。
「では、読書の時間を増やしてみます」
「それ、いいと思う。セイ、本読むの好きそうだし」
「はい。昔から好んでいましたから、この時間を使って、いろいろ読んでみたいと思います」
「他には?」
セイはしばらく黙り込み、やがて静かに口を開いた。
(第90話に続く)