■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第85話) | 世羅の気功と日常ブログ

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「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
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さらに翌朝。

 

習慣に導かれるように庭へ出る。


いつものように屈み込んで土を確認したとき、セイの視線が一箇所で止まった。

 

……あ」

 

茶色い土の間から、ほんの数ミリ。

 

鮮やかな緑色の点が、朝日を浴びて顔を出していた。


プチトマトの芽だった。


ようやく、この場所に見えなかったものが形となって現れたことに、セイの胸は温かくなる。

 

その存在を確かめるように、そっと手を伸ばしてみる。


自分の手が触れ、そこにあることを感覚で感じた瞬間、セイはようやく存在をはっきりと認識した。

 

……本当に芽が出たんだな)

 

セイはその小さな芽を視覚と触覚で確認し、確かにあることを認識する。

 

「これを知ったら、きっと彼女も喜ぶだろうな」

 

自然と、次に彼女が来たときにどうやってこれを伝えようか、と考えている自分に気づく。


だが、ひとまずその考えは頭から切り離し、セイは静かに部屋に戻る。

 

いつも通り、簡単に朝食を済ませ、食器を片付ける。

 

午後も淡々と過ごしていたが、明日はセツナが来ることを思い出し、なんとなく物の位置を移動させてみる。

 

……これでいいだろうか……)

 

何が正解かわからないまま、セイはひとまず手を止める。

 

そして気分転換に、もう1度庭に出てみる。


朝と変わらない様子の芽を確認して、こういうものかと思いながらも、今朝触れた小さな芽の、あの柔らかくも確かな感触を思い出す。

 

(セツナさんは、どんな顔をするだろうか。驚くだろうか、それとも、僕以上に喜んでくれるだろうか)

 

そんな想像を繰り返すだけで、午後という時間は、以前の何倍もの速さで過ぎ去っていった。

 

夕暮れ。


最後に1度だけ、と自分に言い訳をして庭に出る。


夕日に照らされた芽は、朝よりも少しだけ、その命の輝きを増しているように見えた。

 

……明日は一緒に見るのだろうか……)

 

そう心の中で呟いて、セイは1度空を見上げ、息をそっと吐き出して部屋へ戻った。

 

その夜。


セイは布団に入り、静かに目をつむる。


瞼の裏に浮かぶのは、プチトマトの小さな芽。


そして、それを見たときに見せるであろう彼女の笑顔。

 

(明日には、彼女が来る……)

 

その予感に包まれながら、セイは深い眠りへと落ちていった。

 

(第86話に続く)