■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第72話) | 世羅の気功と日常ブログ

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「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
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次の日の朝、いつも通りに着替え、洗顔を済ませる。

 

その後、庭に出て、『幸せの種』やプチトマトを確認した。

 

土はまだ静かで、芽が出る兆しはない。

 

……まだ、早いか)

 

そう思いながら水をやり終え、部屋に戻ると、暖炉のそばに飾られた昨日のリースが目に留まった。

 

暖かい火の光に照らされた緑の輪。

 

それだけでも十分に鑑賞物としては良かったが、広い壁に対しては、どこか少しだけ寂しげに見えた。

 

そこでふと、昨日のクエストの報酬で手に入れた『クラフト用ランダム素材』を思い出す。

 

端末を操作し、アイテム一覧から取り出した袋の中には、艶やかな赤い実のガーランドと、小さなベル、そして数本のシナモンスティックが入っていた。

 

……これだけでは、装飾品を作るには少し足りないな)

 

以前の自分なら、必要ないと判断したものはいつの間にか記憶の底へ沈み、やがて忘れてしまっていただろう。

 

だが、暖炉のそばで弾けるように笑っていた彼女の表情を思い出すと、ただ待つのではなく、自分から何かを形にしたいという衝動が静かに首をもたげた。

 

……もう少しだけ、手を加えてみてもいいかもしれないな)

 

そう考え、セイは獲得した素材から作成可能な「室内装飾」を検索した。

 

そして表示された中から、暖炉やリースに最も調和すると判断し、選んだのが『スワッグ』という名称の壁飾りだった。

 

(スワッグ……花束を逆さにして吊るす、伝統的な装飾か……)

 

効率を重視するなら、報酬のアイテムを適当に組み合わせるだけで十分なはずだ。

 

そう考えセイは上着を手に取り、近所の人目につかない小さな雑貨店へと向かった。

 

あそこなら、この素材に合う麻紐や、土台になる自然な形の木の枝が手に入ると考えたからだ。

 

そして、店の棚からいくつか必要な材料をカゴに入れ、必要な分だけを買い揃えてセイは拠点に帰った。

 

拠点に帰ってからの数時間は、驚くほど静かで、そして濃密な時間になった。

 

昨日の共同作業を思い出しながら、赤い実をバランスよく配置し、シナモンを添えて、花束を束ねるように「スワッグ」を形にしていく。

 

……左右の比率はこれでいいか?……この枝の曲線は、隣のリースと干渉しないだろうか……)

 

淡々とした、指先だけの作業。

 

けれど、出来上がっていく飾りを眺めるたび、胸の奥にわずかな灯火が宿るような、不思議な高揚感があった。

 

……悪くない……これならきっと、セツナさんも……)

 

そう考えながら、完成した飾りを、暖炉の横に並べてみる。

 

すると、部屋が昨日よりもさらに「彼女の好きそうな空間」へと塗り替えられていく。 

 

その変化に、セイは自分でも驚くほど、穏やかな満足感を覚えていた。

 

そしてその夜、たな物で満たされた空間を静かに眺めてから、セイはベッドに横たわり、ゆっくりと目を閉じた。

 

(第73話に続く)