■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第71話) | 世羅の気功と日常ブログ

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【積み重なった1――セイ】

セツナが帰った、その夜――。


数時間前まで彼女の気配があったことが嘘のように、家の中はただ、静けさだけが残っていた

 

けれど、不思議と、空虚ではない。

 

今日1日で、僕たちの“家”は、ほんの少しだけ“特別な空間”になった気がしている。

 

庭で水をやったプチトマトの種と『幸せの種』


広場で選んだクエスト。


並べたマツボックリと、フェルトボール。


数を数えながら、2人で決めたポイントの目安。

 

そして暖炉の柔らかな火の光。


そのそばに飾られたリース。

 

どれも、彼女と一緒に選び、一緒に作り、一緒に「いいね」と言い合ったものだ。

 

だからだろうか。


そこに宿っている温かさは、ただのオブジェクト以上の重さを持っている。

 

作業中は、夢中だった。


効率や手順を考えることに意識が向いていて、自分が何を感じているのかなんて、考えていなかった。

 

けれど、こうして1人で眺めてみると分かる。

 

この家は、「僕がいる場所」から、「僕たちが過ごした場所」に、静かに変わっていた。

 

居場所というものは、突然与えられるものではなく誰かと並んで歩いたり、同じテーブルを囲んだり、同じものを作って笑ったりそういう取るに足らないような日常の積み重ねで、少しずつ形を持ち始めるものなのかもしれない。

 

彼女と一緒にいることで、怖さや不安が完全に消えるわけではない。

 

ただ、それらが前に出てこなくなる。

 

それだけで、僕は息がしやすくなる。

 

……変わっていくのは世界じゃない……たぶん、僕自身だ……)

 

静かな笑みを浮かべながら、僕はもう1度暖炉の火を見る。

 

ゲーム内の1日は、今日もゆっくりと暮れていった。

 

けれど確かに今日という1日は、僕の中に消えない何かを残していった。

 

(第72話に続く)