朝、いつもの時間に目が覚める。
セイはすぐには起き上がらず、しばらくの間、ぼんやりと天井を眺めていた。
(……今日は、セツナさんが来る日だな……)
その無意識の一言が、頭の中でいやに鮮明に響いた。
その瞬間、半分眠っていた意識がすっとハッキリしていく。
ベッドから抜け出すと、いつもの通りに着替え、顔を洗う。
そして、この3日間でもはや完全にルーティーンとなってしまった、庭への確認へと足を向けた。
その後、一通り庭の確認を済ませたセイは、簡単に朝食を済ませ、小さな掃除をする。
特別なことは何もない。
ただ、迎える準備だけ。
(……ちゃんと見てもらえるだろうか)
プチトマトの種、『幸せの種』――
この3日間、自分が気を配って世話をしてきた小さな生命たち。
期待と少しの緊張が入り混じる。
数時間後、チャイムが鳴る。
セイが扉を開けると、セツナの顔がすっと現れた。
「こんにちは、セイ」
「こんにちはセツナさん、来てくれて嬉しいです」
自然に出た言葉の奥で、胸の奥が少し高鳴る。
セツナは自分の上着を、当たり前のように2人のクローゼットにかける。
セイは静かにその様子を見守る。
(……自然に、ここに置いてくれているんだな)
上着を納め終わったセツナが振り返る。
「そういえばさ、プチトマトとかお水とかやってるの?」
セツナが何気なく庭を見ながら言う。
「はい、今朝は1度、水をやりました」
セイが答える。
「あ、お水、やったんだ。そっかー…じゃあ私、やることないね」
「すみません。今度からはセツナさんが来られる日は、セツナさんにお任せした方がいいでしょうか?」
「いや、いいよいいよ。この家はセイが暮らしてるんだからさ。全部セイに任せるよ」
「はい、承知しました」
そのあと2人で部屋に戻る。
(第66話に続く)