■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第64話) | 世羅の気功と日常ブログ

世羅の気功と日常ブログ

「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
テーマに、気ままに想いのままに
書き綴るブログです。

翌日。


朝のルーティーンに、すでに「庭に行く」が完全に組み込まれていた。


土に目立った変化はない。

 

もちろん『幸せの種』にも変化はない。

 

けれど、昨日よりも温度が安定し、ハウス内の空気に、育つ気配がほんの少し漂う。

 

そしてセイは、1人静かにつぶやく。

 

……時間が必要だな」


その言葉は、なぜか自分自身に向けられているようでもあった。

 

その後、一通り庭を確認したセイは部屋に戻り、上着をクローゼットにしまう。


視線は、無意識に“空いたスペース”へ向かった。


……今度来たとき、彼女が使うかもしれない)


そう考えるだけで、胸の奥が温かくなる。

 

午後。

 

少しだけ部屋を掃除した。

 

理由はひとつ。


(次に彼女が来たとき、心地よく過ごしてほしい)


その思いは、もはや恥ずかしいものではなく、自然に受け入れられる形になっていた。

 

夜。

 

ベッドに腰を下ろし、薄暗い天井を見上げる。


……明日、彼女が来るんだな)


そう思うだけで、静かな期待が胸に宿る。

 

プチトマトも、幸せの種も、まだ変化はない。


しかし、確かに変わり始めているのは“自分”だと、セイは気づいていた。


そしてその気づきは、声にならず、ただ静かに、胸の奥で芽吹く前の種のように息づいていた。

 

(第65話に続く)