彼女を見送ってから3日後の朝。
セイはいつも通りの時間に目を覚ました。
そして起き上がり、顔を洗い、軽く身支度を整えた。
キッチンに立ち、先日買ってきた材料を使い、簡単な朝食を用意する。
特別なものは何もない。
それで十分だと、セイは思った。
食事を終え、食器を流しに置く。
ふと、庭に目が向く。
――あの種、どうなっただろうか。
数日前に植えた『幸せの種』。
まだ芽は出ていないはずだ。
だが、無意識に確認したくなる。
庭へ出る。
見た目には変化はない。
セイは軽く土を押さえ、湿り具合を確かめる。
乾きすぎてもなく、湿りすぎてもいない。
それだけ確認して、部屋に戻る。
今日は彼女が来る日だ。
だからといって、特別な準備をするわけではない。
ただ、少しだけ彼女がここにいる時間を想像しながら、静かに自分の時間を過ごす。
操作端末が小さく反応する。
〈今からそっちに向かうね〉
短い通知に、セイは軽く返信する。
〈了解です。お待ちしています〉
ほどなくして、インターホンが鳴った。
少し間を置いて玄関へ向かうと、扉の向こうにセツナが立っている。
「来たよー」
「いらっしゃいませ、セツナさん。お待ちしていました」
「お邪魔します」
セツナが部屋に入り、また上着を脱ぐ。
今度は、セイの方から言葉を出した。
「……やはり、服をかける場所はあった方が良いでしょうか」
「セイ、考えてくれてたの?」
「1人では不要でしたが、2人で使うなら、不便かと」
「だよね」
セツナはすぐ納得する。
「じゃあ、ポイント貯めよ。共同作業で」
「はい。何か、生活に役立つ作業が良いかと」
少し考えて、セイは提案する。
「庭に、何か植えませんか」
「庭?」
「『幸せの種』だけでなく、例えば、ミニトマトなど。手間が少なく、失敗しにくいものが良いかと」
「うん、いいね」
セツナは楽しそうに頷く。
「サラダに入れたら美味しそうだしね」
「では、道具と種を買いに行きましょう」
そう話し合い、2人は早速、買い物に出かけることにした。
(第60話に続く)