道具と種を買うため、2人は歩いて街の園芸店へ向かった。
道中、セツナは小さな店先の飾りを見て立ち止まる。
「あ、見て。あの飾り、やっぱ可愛いよね」
入口に、季節の飾りが吊されていた。
「……あんなの、ありましたか?」
「前回からあったよ。もうすぐクリスマスだから、こういうの増えてくるんだよ」
その言葉で、街全体を見る。
確かに、色や光が少しずつ増えている。
(……見えていなかっただけ、か)
意識が向いた瞬間、世界の情報が増える。
その少し先で、微かな光が視界に入り、胸の奥がざわついた。
「……?」
「セイ?」
「いえ……少し、考え事を……」
理由は分からない。
言葉にする気にもならなかった。
「大丈夫?」
「はい……」
セツナは深く追及せず、それ以上は聞かなかった。
店内に入ると、2人はさっそく必要なものを手に取った。
プランター用の土は軽く湿ったものを選び、必要な量だけ袋に入れる。
小さな透明ハウスも確認し、サイズを合わせて2つ。
それから、ミニトマトの種をカゴに入れた。
ついでに、手袋と小さなシャベルも揃える。
「これで、準備は大丈夫ですね」
「うん、ちゃんと育てられそう」
セツナは楽しそうに笑い、セイも自然と微笑んだ。
レジで会計を済ませ、店を出る。
手にしたプランターやハウスの感触が、いつもより少しだけ重く感じる。
――一緒に手をかける時間が、これから始まるんだ。
そう考えただけで、セイは胸の奥に、温かい感覚が広がるのを感じた。
(第61話に続く)