また、静かな3日間が始まった。
拠点での生活は、思っていたよりもやることがある。
通常のプレイヤーにとって、拠点は立ち寄るだけの場所だ。
だがセイにとっては、生活そのものを支える場所だった。
食事をするには材料が必要で、使えば減るものもある。
気づけば、そうした細々とした必要事項が、頭の中の片隅に溜まっていた。
――買い出しに行くか。
理由としては、それで十分だった。
外に出る。
街は落ち着いていて、人通りも多くない。
それでもセイは、無意識のうちに人目につかない道を選ぶ。
必要な店だけを、順に回る。
食品。
手間のかからないもの。
保存のきくもの。
それから、使えば減る、生活を維持するためのもの。
棚の前で、ほんの一瞬だけ手が止まる。
(……彼女にも必要だろうか)
そんな考えがよぎったが、すぐに切り替えた。
必要なのは、自分の分だけだ。
判断に迷った理由を、あえて言葉にすることはしなかった。
いつも通りの量を選び、カゴに入れる。
それ以上でも、それ以下でもない。
帰り道、少し遠回りをした。
特別な目的があるわけではない。
ただ、家に籠もりきりでいると、身体が鈍る。
そのことを、セイは言葉より先に感覚で知っていた。
人目を避けるように道を選びながら、ただ歩く。
それだけで、十分だった。
拠点に戻り、買ってきたものを所定の場所に収める。
料理は簡単なものばかりだが、朝、昼、夜に温かい食事を摂ることで、時間が区切られる。
1日が、きちんと1日として終わる。
庭にも、変わらず足を運んだ。
芽は出ていない。
見た目には、何も変わらない。
それでも、確認すること自体が、すでに習慣になりつつあった。
(問題はない)
そう判断して、部屋に戻る。
夜。
ベッドに横になり、操作端末を1度だけ確認する。
新しい通知はない。
それを確かめてから、端末を伏せた。
(……次は、2日後)
そう考えかけて、すぐに打ち消す。
ただ、時間の流れの中に、「その日」が、自然に組み込まれているだけだった。
生活は整い、拠点は静かで、セイ自身も、特別な変化を自覚することはなく、この3日間は、何事もなく過ぎていった。
(第59話に続く)