※前回の52話を2月9日23:05に一部加筆修正しました。
その後2人はセツナが自分用にと決めた部屋を軽く見に行った後、自然にリビングへ戻った。
しばらくして、セツナが周囲を見渡してふとこう言った。
「悪くはないんだけど……なんか、少し物足りない気がしない?」
「分かります」
セイも頷く。
「日用品は普通に買えますが、家自体に手を加えるとなると、ポイントが必要になりそうです」
「お金とは別なんだ」
「ええ。この世界独自ですね」
「じゃあさ、ポイントって、実際どんなことに使えるの?」
「ざっと確認しただけなので、今、見てみましょうか」
端末を開く。
模様替え、増設、花壇、庭――。
「意外と選択肢あるね」
「ただ、結構ポイントを使います」
「うわ。本当だ。これは論外だね」
自然に候補が削れていく。
「花壇と庭って、別なんだ」
「庭だと、ペットを飼えたり、家庭菜園にも使えます」
「家庭菜園か……」
セツナは少し考えて、
「花って食べられないし、だったら庭の方がいいよね」
「合理的ですね」
「でしょ」
「設置するだけなら維持費もかかりませんし、手間もかかりません」
「今すぐ使わなくてもいいしね」
「後から増設もできます」
「じゃあ、ポイントもあるし、とりあえず作っとこ」
操作を進めると、家の外に小さな庭が表示された。
「うん。悪くない」
そう言ったあと、セツナが思い出したように言う。
「そういえばさ。あの時の種、あったよね」
「〈幸せの種〉ですね。お預かりしています」
「あれ、今なら植えてもいいんじゃない?」
「……そうですね」
セイは種を呼び出し、庭の一角にそっと植えた。
土をならし、軽く押さえる。
「これで終わりです」
「あっさりしてる」
「まだ、ただの種ですから」
2人で、しばらくその場所を見る。
「でもさ、芽が出るかどうか、ちょっと楽しみじゃない?」
「……ええ」
2人は植えたばかりの『幸せの種』をそっと見つめた。
(第54話に続く)