■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第52話) | 世羅の気功と日常ブログ

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「何もないと思っていた自分に、
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2月8日22:10に一部加筆修正。

 

その直後だった。

 

インターホンが鳴った。

 

モニターを見た瞬間、セイはすぐに立ち上がる。

 

――セツナさんだ。

 

ドアを開ける。

 

「セツナさん、いらっしゃい。お待ちしていました」

 

「来たよ、セイ。お邪魔します」

 

部屋に入ったセツナは、軽く周囲を見回した。

 

「あれ?なんか前に来たときと、雰囲気ちょっと変わってない?」

 

「そうですか?」

 

セイは少し考える。

 

「生活する上で、必要なものを整理しただけですよ」

 

「へえ。ちゃんと住んでる感じ出てきたね」

 

「そのつもりです」

 

リビングに案内しながら、セイは思い出したように言った。

 

「ハーブティー、いかがですか」

 

「うん。飲む飲む」

 

即答だった。

 

「でもさ、ちょっと意外。セイって、ハーブティー飲むんだ」

 

「向こうの世界でも、飲むこと自体はありました。仕事の合間とかですね」

 

湯を注ぐと、やわらかい香りが立ちのぼる。

 

「ただ、こちらに来てからは、少し理由が変わりました」

 

「理由?」

 

「この世界では、アバターなので寝なくても問題はないんですが」

 

カップを差し出しながら続きを言う。

 

「生活のリズムが崩れると、自分が生きている感覚まで分からなくなりそうで…」

 

……うん」

 

……ここでは、眠らなくても死ぬことはありません。でも、眠るという区切りをなくしてしまったら、いつか自分がただの『動いているデータ』になってしまう気がして……だから、不眠気味な夜でもあえて安眠効果のあるものを飲んで、無理にでも自分を休ませるようにしているんです」

 

「そっか…そういう事情があったんだね」

 

「……はい。でも、これからは少し、お茶を淹れる時の理由が変わるかもしれません」

 

「理由?」

 

はい。眠るために『必要だから飲む』だけではなくて……誰かと、こうして過ごす時間の中にあるものとして扱える気がします

 

セイの言葉に、セツナは少しだけ意外そうに目を丸くし、それから柔らかく微笑んだ。 

 

……そっか。それなら、私ももっと美味しく飲めそう」

 

セツナはそう言いながら一口飲む。

 

……あ、普通においしい」

 

「それなら良かったです。味見したとき、セツナさんにも合いそうだと思ったので」

 

「そっか。ありがとね」

 

少し間が空く。

 

「もうここで普通に生活してるんだよね?」

 

「はい。寝起きも、ここです」

 

「ってことは、セイの部屋も決まってる?」

 

「ええ。あの奥の部屋を使っています」

 

「そっか」

 

少し考えてから、

 

「じゃあさ、残ってる空き部屋。私、使っていい?」

 

「もちろんです」

 

「あっさり即決だね」

 

はい。問題ありませんので」

 

「じゃあ、あの手前の部屋。私用に決定ね」

 

「了解しました」

 

こうして2人の間では、その話は自然と終えられた。

 

(第53話に続く)