4日目は、特別な1日ではなかった。
というのも、前日に彼女から「次回は仕事の都合でログインが少し遅れるかも」と連絡があったからだ。
彼女にとっては数時間の遅れであっても、時間の進みが違うこの世界では、丸1日のズレに相当する。
本来なら「3日に1度」会うはずのリズムが、今回は1日後ろに倒れる。
つまり、この4日目はセツナが来ないことを意味していた。
そんなことを考えながら、セイは今日も決まった時間に目が覚め、顔を洗い、簡単な食事をとる。
昨日までと、ほとんど同じ流れ。
何かを新しく考えたわけでも、深く思い悩んだわけでもない。
ただ、「こうして1日を過ごす」ということが、もう説明を要しない感覚になっていた。
やることは最小限で、迷うことも少ない。
買い足すものがあるかを確認し、足りていると分かれば、それで終わり。
無理に外へ出る理由もなかった。
時間は、意識しなくても過ぎていく。
昼と夜の区切りは曖昧で、それでも1日はきちんと終わる。
不安が消えたわけではない。
答えが見つかったわけでもない。
けれど、「待つ」という状態が、特別なものではなくなっていた。
そして夜になり、照明を落とす。
室内は静かで、かすかな暖かさが残るだけだった。
ベッドに横たわり、セイは天井を見つめる。
(……今日も、終わったか)
無理に思いを巡らせようとはしなかった。
ただ、こうして1日を過ごしたことが、それだけで十分だと感じられた。
待つこと。
考えること。
それらはもはや、特別な緊張や不安を伴わない。
ただ、生活の一部として、静かに存在している。
(……変わったのかもしれないな)
以前なら、彼女のことを考えれば、胸がざわつき、何かを成さなければ、と焦ったはずだ。
でも今は、違った。
「来るかどうか」は彼女が決めること。
自分がするのは、来るまでの時間を生きること。
それだけでいい。
小さな呼吸のリズムを確かめる。
見えないものでも、確かに機能している。
胸の奥にある、静かな感覚。
それを感じられるだけで、セイは落ち着きを覚えた。
今日もまた、特別なことは何もなかった。
でも、それでいい。
存在そのものが、もう少しだけ自分のものになった夜。
セイは、そっと目を閉じた。
(第51話に続く)