「じゃあ、クッキング開始だね」
セツナがエプロンを手に取る。
「……そういえば」
「?」
「私、正直に言うと、あんまり料理得意じゃないんだよね」
「……そうなんですか?」
「うん。食べる専門」
セイは少し間を置いて言った。
「でしたら、僕が進め方をお伝えします」
「頼りにしてるよ、セイ」
その一言で、胸の奥が、きゅっと引き締まる。
(……頼りに、された)
包丁の持ち方、火加減、順番。
1つずつ説明しながら、2人で作業を進める。
鍋に湯を沸かし、パスタを投入する。
包丁がまな板に当たる音が、一定のリズムで響く。
「きのこ、もう少し小さめがいいかな?」
「はい。そのくらいだと食感が揃います」
「そこ、そんなに細かくするんだ」
「火が通りやすくなります」
「へー」
フライパンに火を入れると、バターが溶け、香りが立ちのぼる。
「わぁ……いい匂い」
「明太子は火を止めてから加えます」
「了解」
茹で上がったパスタをフライパンに移し、ソースと絡める。
「……そろそろですね」
火を止め、明太子を加える。
全体をさっと混ぜると、色合いが一気に変わった。
「完成?」
「はい」
皿に盛り付け、刻み海苔を散らす。
「お店みたいじゃない?」
「盛り付けで印象は変わりますから」
「初めてにしては上出来じゃない?」
皿に盛られたパスタから、ほんのり香りが立つ。
2人はリビングのテーブルに料理を並べ、向かい合って座る。
「じゃあ……いただきます」
「いただきます」
一口食べて、セツナが目を少し見開く。
「……おいしい」
「良かったです」
「初めて一緒に作ったとは思えないね」
「段取りが良かったので」
「それ、ほぼセイのおかげでしょ」
「……共同作業です」
時折、他愛ない会話を挟みながら、食事は進む。
(第42話に続く)