■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第33話) | 世羅の気功と日常ブログ

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その夜、セイは広場から少し離れた場所にある、大きな木の根元に腰を下ろしていた。


宿を取らなかったのは、特別な理由があったわけじゃない。


いつも通りだ。

 

夜になったから横になる。


朝が来たら起きる。


眠れるかどうかは、二の次だった。

 

静かに息を吐きながら、セイは背を幹に預ける。


視線の先には、誰もいない夜の空間が広がっている。


賑わいは遠く、ここには届かない。

 

端末を起動し、アイテム一覧を開く。


今日、報酬として手に入れたもの――

 

《共鳴の鈴》

 

小さな音も立てず、淡い光だけを宿したそのアイテムを、セイはしばらく眺めていた。

 

……不思議だな)

 

この数日を、ゆっくりと思い返す。


簡易ポーション集め。


装備を見に行った時間。


移動中の、他愛のない会話。

 

3人でいることに、違和感がなかった。


誰かに指示されることもなく、気づけば、それぞれが自然に動いていた。

 

役割を決めたわけでもない。


けれど、噛み合っていた。

 

その中にいる自分も、当然のようにそこにいて、当然のように機能していた。

 

……何も、思われなかったな)

 

NPCかプレイヤーかを判断されることもなく。


異端者としてでもなく。


ただ、そこにいる存在として。


一緒に行動する対象として、そこにいただけだった。

 

「おはよう」と言われて、「おやすみ」と返して、「またね」と言って別れた。

 

それだけのことなのに。


それだけのやり取りが、胸の奥に静かに残っている。

 

たわいもない雑談の中に、自分がいた。


特別扱いも、遠慮もなく、ただそこに存在していた。

 

そんな時間が、こんなふうに温かいものだとは、今まで、知らなかった。

 

セイはもう1度、共鳴の鈴に視線を落とす。

 

これは、今日の証だ。


偶然じゃない。


確かに、3人で過ごした時間の結果。

 

そして――


「また、会うかもしれない」という可能性。

 

約束と呼ぶには、まだ曖昧で、保証も、確証もない。

 

それでも、未来へ続く何かが、確かにそこにある気がした。

 

胸の奥が、ほのかに光を灯すように明るくなる


不安が消えたわけじゃない。


すべてが解決したわけでもない。

 

ただ、今夜は――


世界が、少しだけ温かかった。

 

セイは目を閉じる。


眠りは、すぐには来ないだろう。

 

それでも、構わなかった。


このあたたかな余韻を、しばらく手放したくなかったから。

 

(第34話に続く)