■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第32話) | 世羅の気功と日常ブログ

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前方に、ふと引っかかるものを感じて、セツナは足を止める。

 

霧が、昨日よりも明らかに濃くなっていた。

 

「ここ……昨日の場所の、すぐ近くだよね」

 

「はい」

 

セイが数値を確認しながら、低く言った。


「昨日は発生直後だったため、異変はまだ“兆候段階”に留まっていましたが、本格化したことで、中心位置を特定できました」

 

「なるほどね本命は、こっちか」

 

ミズキが目を細める。

 

霧の中。

 

植物が、不自然に絡み合っていた。

 

「ちょっと、様子見るね」

 

セツナは距離を保ったまま、しゃがみ込む。

 

「触らずに確認だけ――」

 

その瞬間。

 

絡み合った蔦の一部が、意思を持ったように弾ける。

 

「っ!」

 

反射的に身を引いたが、腕に鋭い痛みが走った。

 

「セツナ!」

 

ミズキが即座に前に出る。

 

 一閃。

 

蔦はあっさりと断ち切られ、霧の中へと沈んだ。

 

「大丈夫?」

 

「うん……このくらいなら」

 

セツナはそう言いながらも、腕を押さえる。

 

薄く血が滲んでいた。

 

「無理しないでください霧の影響を受けた環境反応です。軽傷でも、放置は推奨されません」

 

セイが1歩近づく。

 

「そうそうこういう時のための、簡易ポーションでしょ」

 

ミズキは所持アイテム一覧を操作し、小瓶を取り出した。

 

《簡易ポーション》

 

「軽度の外傷と違和感を即時に緩和できるよ」

 

ミズキはそう説明しながら、差し出す。

 

「ありがと」

 

セツナは受け取り、一口飲んだ。

 

……ほんとだ。もう気にならない」

 

「でしょ」

 

ミズキが満足そうにうなずく。

 

そのとき。

 

……あ」

 

セツナが、ふと視線を奥へ向けた。

 

霧のさらに中心。

 

地面の一部が、わずかに歪んでいる。

 

「セイ、あれ」

 

「確認します」

 

セイがしゃがみ込み、情報を解析する。

 

「原因、特定できました地中の結晶片がズレていますこの位置関係だと、周囲に干渉霧が発生しますね」

 

「じゃあ元の位置に戻せば終わりだ」

 

ミズキが言う。

 

3人で慎重に作業を行う。

 

結晶片が正しい位置に戻された瞬間――

 

霧が、すっと引いていった。

 

絡み合っていた植物も、静かに元の姿へ戻る。

 

……これでもう大丈夫、かな?」

 

セツナが息をつく。

 

「問題ありません干渉反応、完全に消失しました」

 

セイが断言する。

 

「よしこれで今回のクエストは終了だね2人とも、初めての中規模クエストなのによくやったよ」

 

ミズキが満足そうに言う。

 

その瞬間、視界に文字が浮かぶ。

 

 

《クエストクリア》

 

《報酬:マネー+特殊アイテム〈共鳴の鈴〉》

 

 

……終わったみたいだね」

 

「はい。クエストクリアです」

 

「『共鳴の鈴』パーティー全員を即座に集合させられる共有アイテム、か。なかなか便利なの引いたね」

 

ミズキが確認する。

 

「これがあれば、何かあってもすぐ合流できますね。3人で動くには、心強いです」

 

セイは静かに言った。

 

 

街へ戻り、広場に着く。

 

人の気配が増え、それぞれの日常が少しずつ戻ってくる。

 

「じゃあ、今日はここで解散だね」

 

ミズキが言った。

 

「ありがとうございました」

 

セイはきちんと頭を下げる。

 

「こちらこそ。いいパーティだったよ」

 

「また、やろうね」

 

セツナは少し名残惜しそうに笑いながらそう言った

 

「はい」

 

少し間を置いて、セイは続ける。

 

……次は、日帰りじゃないのも、いいかもしれません」

 

その言葉に、2人が同時に笑った。

 

「おっ、言うようになったじゃん」

 

「いえ、その……」

 

「まあまあ、そういうの大事だからね。それじゃ、お疲れさま」

 

ミズキが手を振る。

 

「お疲れさまでした」

 

「またねー」

 

2人が去っていくのを見送りながら、 セイは胸の奥で、ゆっくりと呼吸をした。

 

昨日、「おやすみ」と言い。

 

今朝、「おはよう」を交わした。

 

そして今、「またね」と約束ができた。

 

……悪くない)

 

そう思えたことに、 自分でも少し驚きながら――

 

セイは、次の1歩を踏み出した。

 

(第33話に続く)