■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第30話) | 世羅の気功と日常ブログ

世羅の気功と日常ブログ

「何もないと思っていた自分に、
小さな“できた”がくれた喜び」を
テーマに、気ままに想いのままに
書き綴るブログです。

静かな朝だった。

 

セイは、いつもより少しだけ早く目を覚ました。


宿の天井は見慣れないはずなのに、不思議と落ち着いている。

 

すぐに起き上がることはせず、しばらく布団の中で、周囲の気配に耳を澄ませた。

 

誰かが寝返りを打つ音。


小さく、寝息が重なる。

 

……あ)

 

胸の奥が、ほんのわずかに温かくなる。

 

昨夜は、確かに「おやすみ」と言った。


そして今、この世界で「朝」を一緒に迎えている。

 

その事実を、ゆっくりとかみしめる。

 

……おはよう」

 

思わず、小さく声に出していた。

 

「ん……おはよ……」

 

先に反応したのはセツナだった。


まだ半分眠った声で、布団の中から顔を出す。

 

「早いね、セイ」


……少しだけ」

 

その声に反応して、もう1人も動く。

 

「おはよー」


ミズキが大きく伸びをする。


「なんか、良い朝じゃない?」

 

「はい……そうですね」

 

セイは頷いた。

 

「なにそれ、含みある言い方」


セツナがくすっと笑う。

 

セイは少しだけ迷ってから、正直に答えた。

 

「誰かに、おやすみと言って。その人たちに、おはようを返してもらえるのが……」

 

言葉を探す。

 

「思っていたより、嬉しいです」

 

一瞬、部屋が静まったあと。

 

……それめっちゃ大事なやつじゃん」

 

セツナが言った。

 

「うん」


ミズキも頷く。


「普通に過ごしてると忘れがちだけどさでも、こうやって泊まると分かるよね1日の始まりと終わりを、誰かと共有できるって大切なことだよ

 

セイは、静かにうなずいた。

 

それは、旅の途中に挟まれた、ほんの短い「日常」だった。

 

だからこそ、セイはそれを、大事に胸にしまった。

 

(第31話に続く)