風呂場へ向かう時間になる。
「じゃ、あとでね」
「うん」
セツナとミズキが先に向かい、セイは一瞬だけためらってから、続いた。
湯の音がする。
誰かが笑っている声が、壁越しに聞こえた。
(……落ち着こう)
深呼吸して、湯に浸かる。
部屋に戻り、それぞれ布団に腰を下ろす。
セツナは足をぱたぱたさせながら言った。
「ねえ、パジャマってさ。人の見ると、地味に性格出ない?」
「出る出る。楽さ重視か、可愛さ重視か。ちなみに私は、今日は“楽さ重視”」
ミズキが即答する。
「私は“ちょい可愛い寄り”かな」
セツナがそう言い、2人は自然に笑い合う。
そして、ふっと視線がセイに向いた。
「……セイは?」
「え?」
「セイのパジャマ、どういう基準で選んだの?」
セツナがにっこりする。
「き、基準……ですか」
少し考えてから、正直に答える。
「動きやすくて、肌触りがいいものを」
「ほらー、やっぱりそう言うと思った」
ミズキが笑う。
「なんか想像どおり、落ち着く感じ」
「……褒められているのでしょうか」
「褒めてる褒めてる」
セツナは安心したように言った。
「こういうの、悪くないね」
「はい?」
「冒険も楽しいけどさ。終わったあとに、こうやって話せる時間」
ほんの少しだけ、声を落とす。
「……大事だなって思った」
部屋の空気が、また少し柔らいだ。
「最初はちょっと不安だったけど、楽しかった」
「うん。次も、いけそうだね」
そう言いながら、ミズキが伸びをする。
「さて、明日に備えて寝ますか」
「はい」
「おやすみー」
「……おやすみなさい」
セイは布団に横になった。
すぐに眠れるかは分からない。
けれど、目を閉じることに、抵抗はなかった。
胸の奥に、静かな温かさが残っている。
今日という1日を、ちゃんと終えられた。
(第30話に続く)