宿屋は、落ち着いた雰囲気だった。
3人は同じテーブルを囲んで食事をとる。
「これ、美味しい。疲れたあとだからかな」
「それもあるね」
なんでもない会話が続く。
クエストの話も、装備の話も、次第にどうでもよくなっていく。
セイはその空気を、静かに受け取っていた。
食事を終え、食器が下げられたあと、セツナは満足そうに息をついた。
「はー…生き返る…」
「分かる。疲れた日のごはんって、なんでこんなにおいしいんだろ」
ミズキも満足げにうなずく。
「ねえねえ、こうやって3人で冒険して、宿に泊まってさ。なんか、学生の合宿みたいじゃない?」
セツナが嬉しそうに身を乗り出しながらそう言う。
「確かに。修学旅行前日のテンション」
ミズキも楽し気に話に乗る。
「えっ、じゃあアレじゃん。夜になったら、部屋で絶対くだらない話するやつ」
セツナがくすっと笑う。
「するね。確実に」
ミズキはにやっとする。
「……そういう経験は、あまりありませんでしたが」
セイは少し戸惑いながらも、答えた。
「えっ、ほんと?じゃあ今日が初・合宿ノリ?」
セツナは目を丸くする。
「はい……そうなりますね」
「それ、貴重。じゃあ今日は、セイの初体験記念日だね」
ミズキが楽しそうに言う。
「ミ、ミズキさん」
「冗談冗談」
でも2人とも、少し嬉しそうだった。
(第29話に続く)