3日後。
約束の時間、約束の広場。
セイは、少しだけ余裕をもって歩いていた。
以前のように、時間を気にしすぎることもない。
「おはよー」
先に声をかけてきたのはセツナだった。
少し早足で近づいてきて、軽く手を振る。
「おはようございます」
「今日は本番だね」
「はい。ですが……思っていたより、落ち着いています」
「それ、いい準備できたってことじゃない?」
その後ろから、ミズキが合流する。
「2人とも早いね」
「おはよーミズキ」
「ミズキさん、おはようございます」
「2人ともおはようさん。それじゃさっそくクエストボードのところまで行ってみよっか」
3人は並んで歩きだす。
広場の端にある掲示板に、今日の中規模クエストが表示されていた。
《中規模クエスト:霧の森の異変調査》
《形式:探索型》
《報酬:マネー+特殊アイテム〈共鳴の鈴〉》
「特殊アイテム『共鳴の鈴』だって。そういえば報酬を詳しく確認してなかったけど、これってどんなアイテムなんだろう?」
「こちらの説明によると、このアイテムを所有している者が鈴を鳴らすと、一同がそこに瞬時にテレポートして集合できるようです」
「へぇ、それ便利じゃん。これがあればいざって時にすぐに集合できるし、仲間としての絆が感じられるしね」
「なんだか私たちにピッタリのアイテムだね」
「はい。僕もそう思います」
「ってなわけで、報酬の確認も済んだから、クエスト受注するね」
ミズキがタッチパネルを操作して、クエストを正式に受注した。
「クエスト受注完了!」
掲示板に文字が光り、クエストの開始が告げられる。
「じゃ、行こっか。奥のエリアまで調査」
3人は自然に並んで歩き出した。
探索エリアは、前回より少しだけ人の気配が少なかった。
道は分かりにくく、場所によっては足場が悪い。
「うわ、ここちょっと滑る」
「大丈夫?」
「うん。でも、靴変えてきて正解だったかも」
セツナが足元を見て、そう言う。
「そうですね」
セイは頷いた。
「装備の差は、こういうところに出ますね」
「でしょ?」
ミズキが肩越しに振り返る。
「派手さより、地味な安心」
しばらく進み、異変の兆候が見られた場所を確認する。
霧のようなものが薄く漂っていたが、危険な反応はない。
3人は周辺を念入りに調査する。
木々の様子や霧の濃さ、地面の足跡まで、細かく目を配りながら進んだ。
「原因はこれかな」
「数値も落ち着いてるね」
「今日はここまで、ってところですね」
「うん。深追いする段階じゃない。記録は取れたし、次につなげよう」
ミズキがそう告げると、セツナは息を吐いた。
「思ったより歩いたね」
「うん。ちょっと疲れたかも」
ミズキが少し考えてから言う。
「今日はここまでにしよ」
「無理する内容じゃないし、十分だよ」
「賛成です」
「私も」
3人は引き返すことにした。
街へ戻る途中、セツナがぽつりと漏らす。
「なんかさ……いい1日だったね」
「ええ。ちゃんと進めましたし」
「それに、全員無事」
「それが1番」
ミズキが笑う。
「じゃ、この流れで宿行こっか」
(第28話に続く)